2026年6月16日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年6月16日

日本の“信用”が狙われた

 後手に回ってきた密輸対策だが、ここ半年あまり摘発された事例が増えている。米司法省は25年11月にAI半導体の不正積み替え容疑で米国市民と中国籍の容疑者を逮捕。同年12月には中国関連のAI技術密輸ネットワークを摘発し、5000万ドル超の関連技術と現金を押収した。

 26年3月には、米サーバー製造大手のスーパー・マイクロ・コンピューターのイー・シャン・リャオ共同創業者ら3人が、米司法省に起訴された。24年から25年にかけて数十億ドル規模のスーパーマイクロ製サーバーを購入し、台湾、東南アジアを経由して中国に密輸した容疑だ。AI半導体の密輸が産業レベルに拡大していることが示された。

 そして、最新事例として、冒頭であげた日本経由の密輸容疑が摘発された。通関検査官や港湾関係者が買収されやすい途上国ではなく、日本が経由地になったのはなぜか。

 東南アジアなど既存の経由地への監視が強化される中で、密輸が少ないとみなされている日本の方が安全との判断からではないか。昨年、アメリカで猛威を振るうフェンタニル系薬物の原料(前駆体)が、中国から日本経由で密輸されている疑惑が明らかになった。AI半導体とドラッグで扱っている商品は違うが、ロジックは共通している。

 「国際的に信用されている日本からの発送ならば検査は緩くなる」、つまり日本の信用が悪用されたわけだ。

 また、日本はAI半導体の「買い付け」工程でも密輸犯に狙われてもおかしくはない。エヌビディアのAI半導体を購入できる公式代理店、認定を受けた機器メーカーや販売事業者がアジア太平洋地域で最も多い国だからだ。

 エヌビディア製AI半導体を大量保有するさくらインターネットの田中邦裕社長は25年、X(旧ツイッター)に「輸出規制をすり抜けようという怪しいGPU提供をする企業が日本に存在する」「機関投資家とのラウンドテーブルで、中国へのGPU提供が儲かるらしいから御社はどうかと聞かれました。当社はやらないとキッパリ言いました」と投稿している。

  日本で買い付けされたAI半導体の密輸事件は現時点では摘発例こそないものの、密輸が存在している可能性は高い。


新着記事

»もっと見る