小笠原村村長の「覚悟」
政策推進に欠かせないこと
国は2017年に「科学特性マップ」を公表した。全国を4色に色分けし、好ましい地質環境が確認できる可能性が相対的に高い地域を「グリーン」で示す。南鳥島もその一部だが、同じ色に塗られた地域は無数にある。その中でもなぜ、南鳥島を指名し、申し入れをしたのか。
経済産業省放射性廃棄物対策課長の横手広樹さんに理由を聞いた。
「国から調査をお願いするうえで、既に土地利用が進んでいる場所を選ぶのは現実的ではないことから、未利用地があることを勘案した。また、南鳥島は全島が国有地であり、国策に長年ご理解をいただいている地域でもある」
前出の渋谷さんは言う。
「処分場はいずれどこかにつくらなければならない施設ですが、調査箇所がなかなか増えていません。そうした中で、今年1月に赤澤亮正経産相から全国の都道府県知事宛てに発出された文書に書かれてあった『地域任せにすることなく、国の責任で』という言葉が目にとまりました。南鳥島が適地かどうかは現時点で不明ですが、今回の申し入れを受ける覚悟を決めました。ぜひ、他の自治体でも申し入れを受けてほしい」
自らが前に立ち、日本における処分地選定の議論活性化を預かったと言ってもよいのではないか。渋谷さんの意思を無駄にしてはならない。
一方で、東京電機大学工学部教授の寿楽浩太さんは今回の政策の進め方について次のように指摘する。
「今回のように、何らかの基準に基づいて『適性が高い』と見なした地域に国から申し入れをする方針なのであれば、これまでとは明らかにスタンスが異なります。100年以上の時間を要する事業であることも踏まえて、後から経緯や根拠をたどれるよう審議会や閣僚会議で丁寧に議論し、政策や意思決定のトレーサビリティーを確保する必要がある」
自治体からの発意がなければ調査が始まらない状況が続いた中で、今回の決断は評価できる。一方で、政治決断が求められる問題だからこそプロセスが重要であり、今の社会を構成する利害関係者だけでなく、後世への説明責任も果たすため、現時点での政府の考えや見通しを記録に残し、発信することが求められる。
