2026年6月29日(月)

エネルギー依存国家・日本

2026年6月29日

「超長大なリレー」を
いかに引き継ぐか

 原子力政策を根底から理解することは困難を極める。しかも、放射線の単位や原子力にまつわる用語は一般の人々にとってなじみが薄く、理解も難しい。しかも、やっかいなのは、放射線は目に見えず、不安が募りやすい性質があることだ。さらに最終処分に際して、高レベル放射性廃棄物の放射能が天然ウラン並みに減衰するまでには、数千から数万年単位の時間がかかるとされる。

 畢竟、「自分が生きている間に解決しないに等しい」問題でもあり、例えるならば、日本の財政健全化の達成よりも、超長期で何世代にもわたって取り組まねばならない課題であるということだ。こうした特性を踏まえて、我々はこの問題にどう向き合うべきなのか。

 前出の寿楽さんは「一度下した決定に従い、タスクを順当にこなせば一定程度達成されるような通常の政策課題とは性質が異なることを自覚すべき」と言い、こう続ける。

 「南鳥島での動きが進行していく中で、福島第一原発から『処理水』を放出した時と同じように、核実験の被害の歴史を抱える太平洋島しょ国から強い反発が起こり、影響力のある他国が同調する可能性もあります」

 その場合、外交問題にも発展しかねず、一自治体の首長が対応できるレベルを超えることは間違いない。そうした対立があることも見据え、日頃からの外交はもちろんだが、「いざ」という時には国が前面に立つという覚悟を、より明確に示すことが国民の安心感につながる。

 とはいえ、すべてを国任せにするわけにはいかない。根底には、国民の理解と協力が不可欠である。その意味で、この問題は、日本という「国家」と「国民」がたすきをつなぎ続ける〝超長大なリレー〟であり、それぞれの時代を生きる人々がベストを尽くし、英知を結集して乗り越えていくべき課題といえる。

 また留意すべきは、かつて「合理的」とされた対応方針であっても、「正当性」を保ちつつ、時代や国際関係、技術の進展に応じて「決断と適応」を繰り返していかざるを得ないという点である。

 そのうえで、原子力政策を進めていくために最も重要なのは、電力を取り巻く事業者への〝信頼〟が不可欠だという点である。 しかし、原子力に関するトラブル隠しやデータ不正問題のような不祥事が続けば、積み重ねてきた事業者全体の努力は一瞬にして水泡に帰しかねない。このことを片時も忘れてはならない。

 日本にとって不可欠な選択肢である「原発」に、国民はいかに向き合うべきか。前出のむつ商工会議所会頭の内田さんはこう話す。

 「原子力は『危ないもの』としてなくしてしまったら、私たち国民の生活はどのようになっていくのでしょうか。原子力発電を日本で行うのだとすれば、中間貯蔵施設は私たちの地域だけではなく、日本全体にとって必要なものであり、この施設がなかったら、日本の原子力政策の停滞は避けられません。私たちはそのことを誇りにしている部分があることも分かってほしい。これは、電力関係の事業者だけでなく、国民全体にも伝えたいことです」

 原子力には様々な課題がある。その現実を直視し、超長大なリレーのバトンをいかに次へ託せるか。今を生きる世代全体で考える時だ。

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Wedge 2026年7月号より
エネルギー依存国家・日本 持たざる「弱み」を「力」に変えよ
エネルギー依存国家・日本 持たざる「弱み」を「力」に変えよ

ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、世界のエネルギー情勢に激震が走った。日本はこれまで気候変動対策や脱炭素をより重視する姿勢を貫いてきた。しかし、従来の「前提」を根底から見直す局面に立たされている。また、各地で原発の再稼働が進みつつあるが、「核燃料サイクル」実現を進めていくうえで、課題は山積している。だが、思考停止に陥ってしまえばこの現状を打破することはできない。今こそ、日本は「ひよわな花」であることを自覚し、持たざる「弱み」を「力」に変えていく時だ。

 


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