2026年6月25日(木)

トランプ2.0

2026年6月25日

トランプが直面している制限時間=イランの「てこの力」

 今年5月に中国で開催された米中首脳会談において、トランプは9月24日に中国の習近平国家主席を米国に招待したと発表した。イランとの協議は、習の訪米前までに最終合意が成立していないと、トランプは5月の首脳会談と同様、弱い立場で会談に臨むことになり、習にイランに対して圧力をかけてもらうように依頼する形になる。このような事態を回避するために、トランプは60日間ないし30日間の再延長の間に最終合意に漕ぎ着けようと、イラン側に対して譲歩を重ねていくことが予想される。

 よってトランプが、イランがホルムズ海峡を利用する船舶に対して、「航行支援」「安全保障」「捜索・援助」並びに「環境汚染浄化」などの名目で「サービス料」を徴収し、対岸のオマーンと利益を配分する仕組みを認める公算は十分ある。

 もし8月16日以後、さらに協議を30日間ではなく、60日間延長した場合、10月15日が最終合意の期限になり、このとき合意すれば、「オクトーバーサプライズ」になって中間選挙は共和党に有利に働く。しかし、選挙に近づけば、イラン側の交渉パワーが増していき、米国側は譲歩を余儀なくされる事態が目に見える。

 では、当初60日間であった協議が2年間以上延長されて、2028年米大統領選挙に突入したら、共和党大統領候補にどのような影響を与えるのだろうか。率直に言えば、共和党大統領候補はトランプの外交上の大失敗を背負って民主党大統領候補と選挙を戦う。

 いずれにしても、トランプが遭遇している「制限時間」は、イラン側のアドバンテージになり、米国側に対する「てこの力」になるだろう。

イランを動かすのは金銭的インセンティブ

 イランにとってトランプのタイムリミットが「てこの力」とすれば、トランプにとって何がイランに対する力となるのか。軍事力は、外交上の交渉で必要であるが、イランに対してはすでに決定打にはならないことが分かった。

 1970年代にイランは、米国に武器売却の代金を支払ったが、イラン革命によって武器が引き渡されなかった。そこで、オバマ政権は2016年1月17日、和解金として17億ドル(約1986億円、1ドル=116円、当時のレートで換算、以下同)をイラン側に返還した。その際、現金空輸とイランに拘束されていた米国人4人の解放日が同じ日であったので、トランプは、オバマがイランに対する人質解放のための「身代金」を支払ったと批判してきた。米・イラン戦争後、トランプは、特にオバマのこの対応を批判し、イランには10セント(約16円)たりともやらないと断言した。

 しかし、今回トランプは17億ドルよりもはるかに多い金額をイランに供与することになる。覚書の第6項で、イランのために復興基金として、少なくとも3000億ドル(約48兆3945億円)規模の基金を確保すると約束している。また、仮に凍結資産120億ドル(約1兆9380億円、 ブルームバーグ電子版6月23日付)までが解除されれば、イランに少なくとも合計3120億ドル(約50兆4135億円)が流れ込むことになる。

 トランプは、公では一切金銭的インセンティブイランを与えないと約束しておきながら、交渉ではイランに対して金銭的インセンティブを使い、覚書の合意に至ったとみてよい。60日間の最終合意に向けた協議においても、鍵を握るのはこうした金銭的インセンティブになるかもしれない。


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