2026年6月29日(月)

Wedge REPORT

2026年6月29日

調査手法で変わった推定生息数

 こうした研究を誤りだというつもりはない。しかし、このような認識が世間に広がる裏でクマは数を増やしていった。現在、農林水産省の推定では、ツキノワグマ約4万2000頭、ヒグマ約1万1700頭(いずれも推定中央値)である。

 野生動物の推定生息数が増えたのは、調査法の変化もある。以前は、狩猟による捕獲数から推定するほか、調査地を歩き個体の目撃や足跡、糞、樹皮ハギなどの痕跡の数をカウントして生息密度を割り出す方法が取られてきた。

 しかし、同じ調査地でクマの通り道に罠を仕掛けてクマの毛を採取してDNA解析する手法を取ってみると、一気に2倍以上が数えられた。現在では、カメラトラップ法(動くものを自動的に撮影する機材を使用)なども取り入れられて、より精密にカウントされるようになった。またクマを目撃すると通報する仕組みもできて、集まる情報が増えた。その結果、推定生息数は増えてきたのだろう。

5年で倍増する繁殖力

 肝心のクマの繁殖率はどれぐらいなのか。

 ツキノワグマの研究では、2歳から20歳の間に出産するとされている。ヒグマも一般的に4~5歳頃から性成熟し、20歳前後まで繁殖能力を保つ。そして冬眠中にツキノワグマはほぼ2頭、ヒグマは1~4頭を出産する。

 平均ではいずれも2頭だが、毎年ではなく隔年出産だ。ただ子グマが死ぬと、メスはただちに発情して次の子を生む。

 こうしたデータから、繁殖率を計算してみよう。

 クマの数を農水省の推定どおり約5万4000頭とする。メスはその半分だから約2万7000頭。幼年のクマを除いて妊娠できる成獣メスを7割ぐらいと仮定すると、約1万9000頭だ。交尾は隔年だから9500頭。ただし受精卵が子宮に着床するのは何カ月も後で、全部が出産するわけではないという。

 仮に7割として、一度に2頭生むから1万3300頭。これだけなら繁殖率は約25%である。ただ子グマは全部育つわけではない。2歳までに2~3割、半分が死んだ年もあるという。

 そう考えると、成獣になるのは1万頭前後ではないか。約18%となる。

 あまりに大雑把な計算だが、東京農業大学が駆除されたメスクマの歯や子宮を調査して割り出した繁殖率も約20%だった。また兵庫県の研究では約15%だった。だから繁殖率は15~20%と推定しておきたい。これはかなり高い。5年で倍増する勢いだ。

 なお人間による駆除は、ここ数年は毎年5000頭以上、とくに昨年は1万4720頭と史上最多だった。それでも、ようやく増加を抑えるレベルであり、減少させたとは言えない。


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