軽減税率をやめ、給付付き税額控除へ
もちろん、消費税には逆進性がある。所得の低い世帯ほど、所得に占める消費支出の割合が高くなりやすく、消費税の負担感は重くなる。この点を曖昧にしてはならない。消費税を市民的共通負担として擁護することは、その逆進性を無視することではない。
問題は、逆進性にどう対応するかである。逆進性への対応は、消費税率の引き下げや軽減税率ではなく、給付付き税額控除によって行うべきである。
消費税は共通負担として維持しつつ、負担能力の違いは、勤労所得や事業所得だけでなく、金融所得や資産保有も含めた総合的な担税力を把握し、それに基づいて調整する。この役割分担が重要である。
現行制度では、酒類と外食を除く飲食料品と、一定の新聞に8%の軽減税率が適用されている。しかし、軽減税率は税制を複雑にする。外食か持ち帰りか、酒類か食品か、どこまでを飲食料品と見るのかという線引きが必要になる。その結果、税制は市民の生活実感から離れ、細かな分類と政治的調整の世界に入り込む。
さらに、軽減税率は逆進性対策としても粗い。食料品の税率を下げれば、低所得者だけでなく高所得者にも同じように恩恵がおよぶ。むしろ消費額の大きい世帯ほど、金額としての恩恵は大きくなり得る。これでは、限られた財源を本当に支援が必要な人に重点的に届ける制度とはいえない。
したがって、2年間の時限措置が終了する時点で、単に元の制度へ戻してはならない。むしろその時こそ、軽減税率を廃止し、消費税率構造を単純化する機会とすべきである。同時に、逆進性対策として給付付き税額控除を本格的に導入する。
減税の終了は、痛税感を伴うだろう。政治的にも難しい。しかし、だからこそ、単なる復元ではなく、制度改革として設計しなければならない。
税と社会保障を人口減少社会に合わせて組み替えよ
問題は消費税にとどまらない。人口減少社会では、現役世代の数が減り、高齢者人口の比重が高まり、社会保険料に過度に依存した制度はますます持続しにくくなる。賃金に重くかかる社会保険料は、働く人と雇う企業の双方に負担を集中させる。これを放置したまま、消費税だけを上げ下げしても、制度全体のゆがみは解消しない。
必要なのは、税、社会保険料、給付を一体で見直すことである。所得課税は、勤労所得だけでなく金融所得や資産所得を含めて、担税力をより正確に把握する方向へ改めるべきである。資産課税も、人口減少社会における世代間の負担と受益の均衡を考える上で避けて通れない。
同時に、給付のあり方も見直す必要がある。現物給付と現金給付をどう組み合わせるのか。高齢者向け給付、子育て支援、低所得者支援をどのように再配分するのか。これらをバラバラに議論するのではなく、給付付き税額控除を軸に、税と給付を接続する制度へ組み替えるべきである。
消費税を市民的共通負担として位置づけることは、消費税だけを守るという意味ではない。むしろ、消費税を安定した共通負担として置いた上で、所得課税、資産課税、社会保険料、現物給付、現金給付を総合的に再設計することを意味する。人口減少社会にふさわしい制度とは、負担と給付を見えやすくし、市民が納得して支えられる制度でなければならない。
