2026年8月31日(月)

スポーツの新潮流

2026年8月31日

目標に掲げた「いざなごや」
いかに課題を打破したか

 今回の視察で学んだことの一つに、スタジアムの存在がまちづくりにどう影響を与えるのか、人の流れをどう変えるのか、というテーマがある。東野は帰国すると早々に視察の内容を資料にまとめてチームで共有した。スタッフが刺激を得て、新たなアイデアを生み出し、クラブが成長し続けるための材料とするためである。

 名古屋には昨年7月、IGアリーナという収容人数1万5000人規模の大型施設がオープンし、名古屋Dのホームアリーナとなった。

 それまでホームアリーナだったドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)の収容人数はおよそ7500人で、名古屋Dは1試合平均で5300人を集客していた。新アリーナが完成し、チームは平均7000人の動員を目標に掲げた。しかし、「本当にその人数でアリーナが熱狂するのか」と問題提起がなされ、目標は1万人に上方修正された。

 「私たちはスタッフやコーチ、選手が全員集まり、お互いの考えを共有し議論する『ファミリートレーニング』という名の合宿で、自分たちがやっていることをプレゼンして、いろいろな意見を交換します。そこで会場に1万人を集めるためにはどうすればいいのか、徹底的に議論しました。例えばドルフィンズのファンは会場でチームTシャツに着替えます。一方で、野球の中日ドラゴンズのファンは家からユニホームを着て行く。ドルフィンズのTシャツを着たファンが街中にたくさんいたらかっこいいよね。じゃあどうすれば家から着てもらえるのか──。そんな議論を重ねていきました」

 迎えた昨シーズン、観客動員数は平均1万281人に大幅アップし、千葉ジェッツを抜いてBリーグ1位となった。4月26日のホーム最終戦では、クラブ史上最多となる1万3848人を集め、語呂合わせで目標に掲げた1万3758(いざなごや)人を達成してみせた。

 「名古屋を含むこのあたりの地域は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑が生まれて、天下を取った土地です。だったら自分たちもここから天下を取りにいこうと。みんな本気で取り組んでくれて、最後の最後に目標を達成できました」

 名古屋Dだけではない。2016年に発足したBリーグは年々成長を続け、観客動員数は10年で約2.5倍、昨シーズンは548万人超を動員した。発足当初、Bリーグがここまで発展すると予想した人がどれだけいただろうか。当時、バスケットボールの置かれた状況は決して芳しいとは言えなかった。

 国際バスケットボール連盟(FIBA)が日本バスケットボール協会(JBA)に対し、加盟国協会の資格停止という異例の処分を下したのは14年11月のことだった。これにより男女日本代表は国際試合が禁止されたのだから事態は深刻である。

 処分の主な理由は、国内に対立する形で2つの男子リーグが存在することだった。加えてJBAのガバナンスの欠如や、男子日本代表の弱体化も指摘されていた。

 逆風が吹き荒れる中、東野は16年6月にJBA技術委員会委員長に就任する。13年には東京オリンピック(五輪)2020の開催が決まり、委員長に課せられた最大の使命は低迷する男子日本代表の強化だった。


新着記事

»もっと見る