2026年9月30日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年9月30日

華々しい祝典の裏で強く牽制する米国

 この点、トランプ政権は至るところで予防線を張っていることは見逃せない。先に示した「ファクトシート」のうち、中国側が「共通認識」に載せていない部分の下線部からして明らかで、日本が提唱した「開かれたインド太平洋(FOIP)」に言及していることは注目に値しよう。

 また、25日にホワイトハウスが示した歓迎行事プレスリリースを見ると、末尾に「米国がその力の地位を以てリードするとき、平和と豊かさは最も強くなることを無視できないものにした」とある。

 そしてトランプ氏(あるいは、一連の会談のお膳立てをし、入れ知恵した米国外交スタッフ)は習近平氏を歓待する様々な場面で、習近平氏を苛立たせる可能性が高い隠喩を盛り込んだ。

(1) 「我々は同盟だった」発言に続く内容

 トランプ氏が紹介した「Flying Tigers(飛虎隊)」とは、日本軍が重慶国民政府を追いつめるべく「援蒋ルート」を遮断するのを妨げた米中混成の戦闘機部隊であり、その中心人物である退役軍人シェンノートは蒋介石の顧問という役柄であった。米国としては、当時の協力相手はあくまで中華民国・国民党であったことを忘れていないという含意を滲ませたのかもしれない。

(2) トランプ氏から習近平氏に贈られた白頭鷲の像

 トランプ氏は「白頭鷲は米国の象徴であるのみならず、米国における自由と飛翔する精神の象徴である。これが北京の素晴らしい場所に置かれることを願う」と述べた。中国における自由・基本的人権への弾圧を暗に糾弾していると言えよう。中国がこれをどこに置くのか注目される。

トランプ大統領が習近平主席に白頭鷲の像(右)を贈呈した(UPI/アフロ)

(3) 歓迎宴における歌劇『レ・ミゼラブル』の演奏

 2019年の香港抵抗運動では、『レ・ミゼラブル』のうち「Do You Hear the People Sing(民衆の歌)」が人々を鼓舞したことに加えて、演奏された部分も革命への覚醒を含意するものであったことから、この一幕は香港問題をめぐる米国の牽制ではないかと注目を集めている。

もっとも、近年の中国では様々な「習近平〇〇思想」が喧伝される中、『人民網』フランス語版は「習近平主席はレ・ミゼラブルを愛読し、ジャン・バルジャンの愛と忍耐の精神と、『三字経』の「人の初め、性はもとより善なり」を結びつけたとする。したがって、『レ・ミゼラブル』自体が中国で敏感なわけではないとも考えられるが、香港問題や「社会の安定」のための過酷な弾圧を考えると、「抵抗」を語る文学を習近平氏が評価するというのは大いなる矛盾でもある。

(4) ホワイトハウスの花崗岩を用いた新ヘリポート

 トランプ氏は習近平氏を大統領専用ヘリ「Marine One」に案内した際、「彼は岩石のエキスパートだ。他のどんな岩と比べても花崗岩(granite)が好きだ」と紹介した。

 しかし英語には、「無駄骨を折る」という意味の「bite on granite」という表現がある。また「習近平+花崗岩」(簡体字)を検索すると、2021年7月に習近平氏がチベット自治区を訪れた際の『共産党員網』記事が現れる。習近平氏は、完成間もない四川チベット鉄道・ラサ=ニンティ(林芝)間を視察し、建設現場から切り出された花崗岩を前に「10億年前の岩とは我々の想像を超える」と語った。


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