2026年9月30日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年9月30日

 要は、米国は習近平氏の一挙手一投足を常に把握しており、チベットをはじめ少数民族問題をも注視しているのだというメッセージなのかもしれない。

(5) 米国国立公文書館への案内

 中国メディアは、習近平氏が単にここを訪れたことしか伝えていない。しかしトランプ氏は、独立宣言・米国憲法の原本ならびに、国民の基本的人権を守る旨を定めた1791年の権利章典を習近平氏に見せてまわった。これもまた習近平中国の現実に対する強い牽制でなかったはずはない。(もっとも、今般のトランプ氏と米国メディアの関係を見るにつけ、まずは米国自身がしっかりして欲しいと思うのは筆者だけであろうか)

日本はどうするのか

 総じてトランプ氏・米国外交当局は、去る5月の訪中において中国側が示した丁重な歓待に照らして、周到に習近平氏をもてなしたかに見える。しかし一方で、習近平氏が北京の天壇を案内し、如何にも「天命」とともにある中華文明の智慧と権威をひけらかす態度をとったことに、内心複雑な感情を抱いたのではないか。その意趣返しとして米国側は、様々な行事やプレスリリースを通じて、中国ではなく米国の力と価値こそが世界に積極的な影響をもたらすことを示そうとしたと言える。

 したがって今般の米中首脳会談は、表向きの「建設的戦略安定関係」の美名の裏で、グローバルな牽引役を目指す両国の対立がますます激化していることを示した。この中で米国が中国の認知戦に乗って、80年以上前の中国との同盟を、現実の日米同盟やアジア太平洋への関与よりも優先させ始めたようには見えない。

 しかし少なくとも、中国が米国・全世界を対象に、歴史をめぐる認知戦を強めていることは余りにも明らかになった。

 このような中で最も困難に直面するのは、他でもない日本(そして台湾)である。

 繰り返すが、中国は自らこそが「反ファシスト戦争として戦われた第二次世界大戦の勝者であり、戦後国際秩序を主導する」と称しており、「反ファシスト戦争の結果として日本は台湾を完全に放棄すべきところ、台湾の一部分である釣魚島(=尖閣諸島)を中国に返還せず不法に占拠を続け、さらには台湾問題に対して不当に介入しようとしている」という宣伝を強めている。そして、日本が国連憲章における旧敵国条項の完全な撤廃を求めていることについて、最近の外交部定例記者会見では事あるごとに「日本はこの条項の存在を前提に加盟した。今日、日本は軍備増強を進め危険である。ゆえに、旧敵国条項はますます重要性を増している」という宣伝を繰り返している。

 このような流れに、今般の「中米の同盟を思い起こす」という言質が加わったことで、現実の日米同盟よりも歴史上の中米同盟の方がより生命力を有し、中長期的な中米関係の発展という潮流に日本は取り残され自滅する、といった類の認知戦がますます強まることであろう。しかも、それらが安価な中国AIの中に実装されて、全世界に拡散しかねない。

 したがって日本としては今後一層、このような中国の認知戦の論理をよく見極めたうえで、中国の改革・開放をも強力に支えて来た戦後80年の平和国家の歩みに照らして、指摘・批判するべきことは速やかに指摘・批判し、一方で開かれた国際協力という点で利害を共有する国々との協力をますます強める必要があろう。

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