西の橿原神宮
ところで、明治神宮を模して建設された神社と森がある。神武天皇を祀る奈良県の橿原神宮だ。東の明治神宮に対して西の橿原神宮を目指したという。
場所は日本書紀などの記載から畝傍山東南の麓を神武天皇即位の地とした。神社の創建は1890年だが、その頃は周辺に田畑が広がっていた。森づくりは1911年から始まったが、神武天皇即位2600年当たる40年に記念事業として社殿や境域の大幅な拡張が行われた。森も広められた。宮域の大規模な拡張に合わせてとりかかったのである。
ただし森づくりの手法は明治神宮と若干違った。献木も寄せられたが、カシ類を中心に植えたのである。地名が橿原であり、昔はカシの木が生い茂っていたことが発掘調査により推測されたことから、昔の姿に早くもどすことを目指して植える木を選んだ。
現在の橿原神宮の森を見ると、それが成功したかどうかは微妙だ。たしかにカシの木は多いが、地表に草は少なく、高齢の大木だけが林立する場所が多い。後継の木々が育っていないのだ。見通しはよいが、あまり豊かな森とは言えない景観と言えよう。
そのため現在、植生の改良が企てられている。もっと多くの樹種が、さまざまな樹齢で生えなければ、現在のカシの寿命が来てしまうと、森が衰退しかねないからだ。
橿原神宮のほぼ隣には神武天皇陵がある。こちらも同時期に造営され、徐々に拡張されてきたが、その敷地内には豊かな森が形成されている。やはりシイやカシ類が多く見えるが、林床には草が茂り落葉広葉樹も多く目にできる。木々の背の高さも様々で、空間全体を埋めている。見た目は明治神宮の森に似ている。
最初に植えた木の苗の種類まで確認できなかったが、橿原神宮と大きく変わるまい。ただ天皇陵内は立入禁止だから、自然のままに置かれたのだろう。
畝傍山麓だから、山から多くの草木の種子は飛んできているはずだ。長い年月をかけて、多くの生命が組み合わさって現在の森林生態系を形作ったのである。
