同じ苗木ばかりでは育たない
これらの事例は、重要なことを示唆している。早く森を再生しようと最初から期待する樹木の苗ばかりを植えると、結果的にあまり健全な植生にならない。
植物は、水と栄養素があるだけでは育たない。土壌内にキノコやカビなどの菌類、細菌類、土中の微生物、昆虫などが絡み合った生命圏を形成することで草木も育つのだ。
自然は時間とともに変化する。現在ある草木がずっと存在するとは限らないのだ。植物が生えることで光の照り方や土壌が変化し、それに適応した植生へと移り変わる。だから最初から最終目的とする木を植えても育ちにくい。
スギやヒノキの人工林のように最初に植えた苗と同じ木をずっと維持したければ、常に人の手を加える必要があるのである。
自然は人の思い通りにならない
改めて世間の望む森について聞くと、花の咲く木や、ドングリのなる木を植えたいという声が大きい。サクラは人気だし、街路樹に多いハナミズキなども好まれる。しかし、花木が森の中で育つとは限らないし、園芸品種や外来種も多い。
またドングリの成る木を安易に増やすのも危険だ。ドングリは、鳥類のほかシカ、イノシシ、そしてクマと多くの動物の餌になる。餌が豊富なら栄養がよくなり、繁殖しやすくなるから生息数を増やすだろう。そしてより餌を求めて人里に出没する。
野生動物は、農作物を荒らし、時に人やペットを襲うこともある。さらにマダニやヒルなど感染症を引き起こす害虫も持ち込みかねない。
土壌や気象などに合った木を植えることがもっとも重要だ。これが適地適木である。
自然は人の思い通りにならない。だからこそ、森づくりは急がず、慎重に進めねばならない。そして100年、200年の計を持って臨むべきだろう。
