いずれも過半数取れず
最新の世論調査の議席獲得予測によると、ネタニヤフ首相率いる右派リクードは20議席を獲得、対して反対派のアイゼンコット元参謀総長の中道ヤシャルが26議席を制する見通しだ。全体としては、ネタニヤフ勢力の49議席に対し、反ネタニヤフ勢力は54議席。いずれも過半数の61議席には届かない。
アラブ系市民による2つのアラブ政党がカギを握ることになる。アラブ政党は計13議席獲得の見通し。だが、2級市民といわれるアラブ政党を政権に取り込めば「政権の正統性」を問われることになりかねない。アイゼンコット氏はアラブ政党と手を結ぶことを排除しない姿勢を見せている。
だが、反ネタニヤフの極右「わが家イスラエル」のリーベルマン党首は反対の立場、早くも反ネタニヤフ陣営の亀裂が露呈している。もう1つの大きな問題はユダヤ教の超正統派をどう陣営に取り込むかだ。ネタニヤフ首相は超正統派の2党を引き入れて政権を維持してきた。2党は8議席ずつ獲得する見通し。
しかし、超正統派は「ユダヤ教の勉学」を理由に兵役の免除を要求。ネタニヤフ政権はこれに応じてきた。
超正統派はイスラエル全体で約14%を占めるといわれ、彼らを徴兵免除することは一般市民との間で不公平感を生んでいる。特にガザ戦争やレバノン攻撃などでイスラエル軍兵士は不足気味だ。
最高裁も徴兵免除は違憲との判決を出しており、選挙後にはこの問題に決着をつける必要がある。仮に2党を入れて政権を樹立しても、徴兵免除の行方次第で政権離脱、そのまま政権崩壊ということになりかねない。また過去にリクードと鎬を削った政党「青と白」は議席配分の対象となる3.25%の得票率を得ることができないとして選挙戦から撤退した。
野党党首を「サル」呼ばわり
こうした中で最近、ネタニヤフ首相の取り巻きの政治評論家からとんでもない発言が出て首相も沈静化に躍起だ。評論家のイノン・マガル氏がテレビの政治番組で、首相のライバルのアイゼンコット元参謀総長を「ミズラヒで、サルだ」「アシュケナージのエリートに操られている」などと侮辱した。
イスラエル社会では、「アシュケナージ」はドイツなど欧州系のユダヤ人。「ミズラヒ」は中東系のユダヤ人のことで、アシュケナージがミズラヒを差別してきた歴史がある。アイゼンコット氏は先祖がモロッコ出身だ。同氏は「問題はマガルではない。背後にいる人物だ」と首相を強く批判した。
首相は「不適切だった」とマガル氏の発言を批判した上で、ヤシャル陣営も同様の差別発言をリクード支持者にしたが、アイゼンコット氏はいさめていないと反撃した。イスラエルでは過去、こうした差別発言が選挙結果を大きく左右したことがあり、首相もアイゼンコット氏も火消しに懸命だ。
