MAGAはどうなるのか
それではこの動き全体はどこへ向かっていくのだろうか。歴史を振り返ると、政治運動において「カリスマ的なカリスマリーダー」への信頼が揺らぎ、一方で「運動の理念やアイデンティティ」だけが支持層に残って内部分裂やリーダーのすげ替えが起きるという構造変動は歴史上、何度も繰り返されてきた。
例えば、カリスマ的な創設者が求心力低下を起こした後、より組織的で冷徹、かつ実務能力の高い「2代目」が運動を乗っ取り、感情的な運動から強固な政治組織へと変貌させるパターンである。バンス副大統領が受け継ぐとこの形になりそうである。
他には、カリスマが力を失い、支持層が「理念派」と「離脱派」に分裂し弱体化した隙を突いて、それまで運動に押されていた従来の主流派が主導権を奪い返し、運動の美味しいところだけを吸収して骨抜きにするパターンもある。米国政治では、19世紀末に盛り上がった「人民党」が、指導部が弱大化した隙をついて、一部の公約を民主党が取り込んで運動自体を飲み込んでしまったことが想起される。
今回のケースでは、共和党主流派がMAGAの「国境管理」などの人気政策だけ引き継ぎ、トランプの個人的な影響力を排除して、党をビジネス重視の伝統的保守政党に戻すという形である。
あるいは、カリスマを失った支持層が内部闘争に明け暮れたり、支持者が投票意欲を失って選挙に行かなくなったりすることで、結果として対立する政治勢力に漁夫の利を与え、歴史的な政権交代や大敗を喫するパターンもある。1912年の大統領選で、カリスマ的指導者だったセオドア・ルーズベルトが、共和党を割って立候補し、共和党の支持層が真っ二つに割れた結果、民主党のウィルソンに大統領の座を明け渡し、共和党は歴史的大敗を喫したケースがそれである。今回の事例に当てはめると、バリス氏が予測するように中間選挙で共和党が大敗し、民主党の優位が決定づけられることになる。
MAGAの理念は、当面生き続けるだろう。かつてトランプは「私がMAGAだ」と述べたが、トランプを超えてMAGAの自走はすでに始まっているのである。
