2024年4月25日(木)

田部康喜のTV読本

2014年10月8日

 「映画は何度も繰り返して観られるものである」と述べたのは、ヒッチコック監督である。

 テレビの番組もまたそうである。

過去から現在を照射するメディアとして

 福島第一原子力発電所の故・吉田昌郎所長が政府事故調査・検証委員会の聴取に応じた、いわゆる「吉田調書」の報道をめぐって、朝日新聞がその誤報を認めたうえで記事を取り消して謝罪した。

 原発事故については、政府と国会、そして民間の調査委員会がそれぞれ報告書をまとめている。政府の調査報告がまとまったのを機会にそれぞれの責任者を集めて、事故について解明された事実と、これからの課題を話し合った番組を改めて見た。

 NHKスペシャル「原発事故調 最終報告~解明された謎 残された課題~」(2012年7月24日放映)である。

 テレビは現在を伝えるメディアとして発展を遂げてきたが、デジタルアーカイブの整備によって、過去から現在を照射するメディアとしての地平を切り拓きつつある。

 この番組では、原発事故報道に当初からかかわっている根元良弘デスクが、3つの事故調査報告書について、その膨大な情報をコンパクトにまとめながら、それぞれの報告書の責任者に事故の問題点について語らせる。

 政府事故調の448頁におよぶ報告書が原発事故直後の2011年6月から、関係者の聞き取りに着手した事実が根元デスクによって告げられる。事情聴取の対象者は770人もの数にのぼる。

 故・吉田所長は自らが体験したことは事故の一部であり、全体をみるには他の人々の証言と突き合わせる必要がある趣旨から、自らの証言の公表を控えるように要請していたといわれる。


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