世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月16日

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 一方、人権団体は、イスラム反体制運動が燻るタイ南部で1970年代にあったような軍事法廷が設けられることを恐れている。また、クーデター反対派への対処は概して穏やかだが、一部活動家の消息不明や拷問の話は聞かれる。新憲法の詳細が明らかになれば、今後の方向性が多少見えて来るだろうが、新憲法の中身に関する公開議論はまだない、と報じています。

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 上記は、クーデター後のタイの現状と問題点を論じています。

 エコノミスト誌も指摘しているように、タイでは、経済が問題です。輸出不振は、欧米や中国の経済情勢が原因で、クーデターのせいではありませんが、クーデターの直接の影響を被っているのは観光と外国からの投資です。クーデターの結果、外国企業は、投資先としてのタイを見限ったわけではありませんが、しばらく投資は控えているようです。

 プラユット率いる暫定内閣の政策で注目されるのは、土地税と相続税の導入です。不動産税と相続税の無いことは、タイのエスタブリッシュメントの特権の象徴でした。これまでも両税の導入は議論されたことはありましたが、富裕層の反対で日の目を見ていません。暫定政権が両税の導入を提案していることは、暫定政権が掲げる「公正な社会の実現」のための一策であり、それはこれまでタクシン派の政党の支持基盤であった低所得者層、特に東北タイなどの農民の不満に対処しようとするものです。

 クーデターの政治的目的は、タクシン派の再起を阻止することです。2006年にタクシン首相を追放したクーデター後に行われた総選挙で、タクシン派が再び過半数を獲得し、何のためのクーデターであったかと言われました。プラユットはその二の舞は何としてでも避けたいと考えています。そのため暫定政権は、1)選挙法の改正、2)汚職、特に選挙での買票の排除、そして、3)低所得層にアピールする政策の実施、を考えており、不動産税、相続税の導入は3)の一つです。

 暫定政権の重要政策の1つは汚職の追放です。近年のタイの政府がらみの汚職は目に余るものがあると言われてきたことを考えれば当然ですが、汚職の追放は前述の通り、選挙対策でもあります。タイの選挙に買票はつきものですが、特にタクシン派は選挙にふんだんにお金を使い、それがタクシン派の勝利につながったと言われています。タクシン派の再起を阻止するためには買票を厳しく取り締まる必要があるのでしょう。

  
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