日本でよく報道されて知られるようになった「ゴーストタウン」は、内蒙古自治区のオルドス市であるが、この度のランキングでは30位で「ゴーストタウン指数」では0.49と0.5に近く、建設面積との比率であるべき人口の半分程度と言われるほど最悪な状況ではないのかもしれない。ランキング1位の同じ内蒙古自治区の二連浩特はゴーストタウン指数がなんと0.07という圧倒的な建築面積に対する人口の少なさを記録している。もちろんオルドス市は人口が159万もあることから、需要もあり、多くのマンションが作られて空室の数も多い事が予想できるが、空室率からすれば、二連浩特は圧倒的な「ゴーストタウン」状況なのだ。
不思議な事にこのようないわば都市計画の失敗といえるような状況を生み出しながらその都市のトップが更迭されたとか責任を問われたという報道はあまりみられない。まだ高度成長が続いていた時期には各地のトップの業績も内実よりもGDPに反映されるような大型の物件やインフラ整備によって評価されていた事があるかもしれない。
ランキングには北京や天津、上海等の直轄市のような中国を代表する都市が入っていないが、かといって「ゴーストタウン」がない、というわけではない。ランキングに入ってこないのは「ゴーストタウン」化した地域は町全体のごく一部でしかないからだろう。
例えば天津市郊外の響螺湾地域。ここには2007年以降、天津市政府が中心となり数百億元が投資されて大々的な一大商業地域が作られ、「未来の中国のマンハッタン」とさえも呼ばれた時期もあったが、「マンハッタン」どころか建設が中断した無数のビルが放置され、「ゴーストタウン」となった。この頃天津市のトップである党委員会書記を務めていたのは現在副首相で中国指導部のトップ7に位置する張高麗氏だ。張副首相は最近、北京と天津、河北での連携を模索するタスクフォースの長にも就任し、汚名挽回が期待されている。
このような視点から見れば、今回発表された「ゴーストタウン・ランキング」はかなり恣意的な数字の羅列といえるかもしれないが、少なくとも数値化されて公表されるようになっただけ進歩だといえるかもしれない。「ゴーストタウン」がまだまだ50ぐらいは表れるかもしれないと考えると中国経済のブラックホールの底知れない闇に戦慄を覚えざるをえない。
関連記事:不動産経営者の夜逃げラッシュが招く 中国経済の崩壊
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。