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2014年10月31日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

 しかし、この2年間の反「四風」と反腐敗闘争により既得権益を縮小された地方の党・政府幹部のダメージは大きく、中央への抵抗や反発は深刻である。かれらはどこまで我慢できるだろうか。中央への不満がさらに強まる可能性もある。

全人代と中規委の「依法治国」実施の主導権争いか

 法を重視することで、全人代、全人代常務委員会の重要性がこれまで以上に高まる可能性がある。先に見たように、18期4中全会の「決定」は「全人代、全人代常務委員会の憲法監督制度を完成させ」としている。第18回党大会の報告、18期3中全会の「決定」には、この全人代の憲法監督制度への言及はない。18期4中全会の「決定」の内容に新鮮味が感じられない中で、全人代への言及は数少ない新しい内容である。

 さらに「基づく」べき法を制定するのが立法機関としての全人代である。党の指導が優先される以上、法律の内容、すなわち共産党にとって「いい法律」か、「悪い法律」かということを確定する上で全人代が重要な役割を果たすことは難しいが、手続き、ステップとして全人代の重要性は高まる。

 そうした重要性が増すことで、全人代が政治的に自立的な役割を果たす可能性が出てくる。このことは、単に「依法治国」の実施の如何を意味しない。存在感が薄いように見える張徳江らが全人代の立法機能、監督機能をテコに政治的影響力を行使するかもしれない。こうした状況は過去にもある。1990年代、江沢民と対立した喬石が全人代常務委員長の地位をもって影響力を高めたことと似ている。

 他方、中規委の異例の全体会議開催も見方によっては「依法治国」の実施の主導権を中規委が握ることのアピールに見えなくもない。中規委をテコに王岐山は引き続き影響力を行使したいと考えているかもしれない。

 全人代と中規委、どちらが「依法治国」実施の主導権を握るかということは権力闘争と無縁ではない。習近平への抵抗勢力が3年後の第19回党大会でのポスト習近平の人事をめぐる権力闘争とリンクさせて、地方の抵抗や反発を利用する可能性も否定できない。習近平政権にとって、「依法治国」は、長期的に見て「国家統治システムと統治能力の近代化の促進という一党支配強化につながるかもしれないが、短期的に見ると権力闘争のエスカレートにつながるかもしれないリスクでもある。

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