また、定置網で獲れたマグロは、漁獲枠を超えた分が放流されています。東大西洋では、30キロ未満の漁獲、保持、水揚げを禁止し、漁業種類・海域ごとに6~11カ月の禁漁期を設定、すべての養殖用のイケスにステレオビデオカメラを設置しました。ICCATは「漁獲証明制度」を導入し、どこでどのように獲ったかのデータを添付して流通させ、不正を防いでいます。また地中海と東部大西洋水域では、2014年の漁では、EU船の主体に約520隻が操業し、監視船30隻と航空機11機が動員され監視活動にあたっています。
一方で、日本が漁獲も消費も主体となる太平洋クロマグロの資源管理体制は、どうなっているでしょうか? 2015年には未成魚の「クロマグロ半減合意」、「半減提案を迫られた日本」、「日本の科学的提案が奏功」と9月に各メディアで報道されました。しかし、水産庁は、大きな影響はないと予想しています。なぜでしょうか? 「半減」ならば影響は大きいはずです。
その答えは、「いつに対する半減なのか」ということにあります。今回の半減というのは、まだマグロが十分に獲れていた約10年も前、2002~2004年の平均からの半減です。獲れなくなってきたここ数年の漁獲量に対しての削減ではありません。このため不思議なことに、2015年の半減という漁獲枠4,007トンは、2012年の漁獲実績である3,815トンより多いくらいなのです。
また、漁獲量の半減は、未成魚に対してであり、親魚の漁獲量のことではありません。日本の提案に対し、東部太平洋でマグロを主に漁獲するメキシコからは「中西部太平洋(日本が主にマグロを漁獲)の削減は、2010~2012年と比べると僅か6%しか減っていない」と批判されています。
日本の各地でマグロ漁が悪化し、特に沿岸漁業者が苦しんでいます。手遅れになる前に、一刻も早く科学的な資源管理と漁獲枠、そして個別割当制度により早獲り競争を撲滅させていかねばならなりません。
個別割当制度による沿岸漁業者保護政策
資源が減少している時は、その配分方法で合意が難しくなります。誰もが、自分の漁獲量だけは極力減らしたくないので、一層早獲り競争が過熱してしまいます。個別割当もせずに、全体の枠を減らすというやり方で、良い結果が出るはずありません。小型の価値がない魚まで乱獲されてしまうだけです。
個別割当制度は、漁獲枠の配分において小規模の漁業者を優遇しています。ニュージーランドや米国では先住民に対して別途TACを配分しています。小規模な沿岸漁業者や先住民は、大きな漁業者を持つ漁業者と競争すれば、漁獲能力の違いから不利な状況に立たされてしまいます。