2022年12月3日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2014年11月27日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部 教授

東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所調査本部長、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

付加価値向上が決め手

 現在の120円に近い円ドル相場の水準は多様な側面から見ることができる。そして、現在の巨額の貿易赤字や空洞化が進む製造業の実態などからすれば、現状程度の円ドル水準を円安に過ぎるとは言い難い。

 しかし、結局のところ、いくら現状の為替相場が適正あるいは過大な円安・円高ではないと計算されても、企業や家計ひいては日本経済が疲弊するようでは、好ましい水準とは言えない。そして、家計にとっては輸入物価を引き下げる円高が好ましく、輸出企業にとっては十分な輸出競争力がつく円安が望ましい。

 一方、為替相場の水準で一喜一憂するようでは、持続的な安定成長の実現がおぼつかないのも事実であろう。円高が望ましいとしても、それがさらなる産業空洞化と失業増を招くものであっては、日本経済の実力から見て相応しくない。

 逆に、円安が望ましいとしても、それが日本として低生産性をドル換算した低賃金で補い、主として安値で輸出競争力を維持することを意味しているようでは先進国として情けない。ちなみに、日本の一人当たり給与・報酬額(雇用者報酬)は、ドル換算で2012年にはアメリカの8割強あったが、2013年分を120円でドル換算すると5割強に低下し、イタリア、スペインより低くなる(図表6)。

【図表6】一人当たり給与・報酬額の国際比較
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 大事なことは、円安円高に一喜一憂するのではなく、産業競争力をつけることにある。それは、もっと付加価値がつくようにイノベーションを推進し、生産性を上げて円安でなくても産業競争力が発揮できるようにすることである。そして、このことは賃金増で輸入物価上昇に打ち勝つ家計購買力の向上が実現することに他ならない。

  
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