岡山市の吉備津(きびつ)神社は、「吉備津造り」と称される、日本唯一の建築様式の社殿で名高い。主祭神の大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)による鬼退治神話は、昔話「桃太郎」のもとといわれ、境内および周辺には鬼退治に由来する遺跡や建造物も少なくない。毎年1月3日には、大吉備津彦命が鬼退治のときに矢を岩の上に置いて祈ったことに由来する「矢立(やたて)の神事」が斎行される。
「矢立の神事の原型となっているのが、当神社で古来行われていた箭祭(やまつり)です。これはいつしか途絶えましたが、昭和35年(1960)に、岡山弓道連盟の奉仕によって復活しました」と、吉備津神社禰宜(ねぎ)の上西謙介(うえにしけんすけ)さん。
当日は午前9時に本殿での神事の後、矢置岩(やおきいわ)前に神職および奉仕者一同が参進。宮司が矢を岩の上に並べ、弓を岩に立て掛けて、天下泰平、国家安泰、氏子安全、五穀豊穣などを祈念する。その後、6人のオミ(射手)が、それぞれ各方位に向かって矢を放つ。
「当日は例年1万5000人ほどの参拝者でにぎわいます。ウハオミ、ナカオミと呼ばれるオミが単独で射った後、4人のオミが巽(たつみ)・艮(うしとら)・坤(ひつじさる)・乾(いぬい)の四方に同時に矢を放つ場面が見どころです」
元日から3日まで、三味線や太鼓に合わせて餅をつく、三味線餅つきも行われ、ついた餅は御福餅として頒布される。
矢立の神事
<期間>1月3日
<会場>岡山市北区・吉備津神社(吉備線吉備津駅下車)
<問>☎086(287)4111
http://kibitujinja.com/about/yadate.html
*情報は2014年11月現在のものです。料金・時間・休館日などの詳細は、お出かけの際、現地にお確かめください
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