であるなら、消費税の反動増減の効果を小さくすること、本来のマイナスのショックが徐々に表れるようにすることを考えた方が良い。その方策は、毎年1%ずつ消費税を上げることである。1%ずつ引き上げることができないのは小売業界が値札の書き換えを嫌がるからである。たしかに、誰かが残業して書き換えなければならない。であるなら、残業代を政府が払えば良いのではないか。これには100億円もかからないだろう。消費税3%のショックを和らげるためとして5兆円の公共事業の積み増しをしたことに比べれば安いものではないか。
また、住宅という、投資であって消費ではないものに消費税を課すのは駆け込みとその反動を大きくする。これも止めるべきである。
財政再建で一番大事なのは、歳出の抑制である。図に見るように、第1次安倍政権ではGDPの15.9%だった歳出が14年度では19.5%にも増えている。これを元に戻せば、純歳出と歳入の差は3%となって、対名目GDP比率が上昇しない状況をつくれる。すなわち、もう財政再建ができてしまう。
消費税を上げて社会保障支出の増大に備えなければならないという議論があるが、60年に現在の社会保障を維持するためには70%の消費税が必要となる。現在、65歳以上の高齢者一人当たりの社会保障支出は年間253万円である。一方、働く人の平均給与は年409万円にすぎない。65歳以上の人が人口の40%になるとき、現行の社会保障制度を維持することが不可能だとは直感的に理解できるだろう。直感では不十分だという方には、私の『若者を見殺しにする日本経済』(ちくま新書、13年)第2章を読んでいただきたい。消費税の限度は20%であろうから、それから逆算して、社会保障支出を維持可能な限度に引き下げるべきだ。そうしなければ財政再建はできない。
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