<著者新刊本のご紹介>
文春新書から20日に『韓国「反日」の真相』という新著を出します。書名に「反日」と入っていますが、実際にはもう少し広い「韓国の社会意識」について読み解こうとしたものです。
近年、韓国の対日外交などに対して違和感や不快感を抱く日本人が増えています。ヘイトスピーチのような差別主義的な言動は論外だと考える人でも、こうした不快感を感じる人は多いのではないでしょうか。正直に言えば、学生時代から四半世紀に渡って韓国社会と接してきた私ですら、そうした感覚から自由ではありません。
私は昨年3月の毎日新聞のコラム「記者の目」に、「韓国で取材していて、『うんざりだ』と思うことが多くなった」と書きました。旧友から「悲鳴のようなコラムだった」と評されましたが、その時の偽らざる心境をつづったものです。
日本人が抱く不快感の背景にあるのは、韓国社会の意識構造を「理解できない」と感じることがあるのではないかと思います。でも、だからといって単純に「反日司法」とか「反日団体」というレッテル張りで済ませることは、楽ではあるが、非生産的です。少なくとも、冷静な観察者であるべきメディアがそうしたレッテル張りに走ることは、怠慢でしかないでしょう。
そう考えた私は昨年2月、毎日新聞で「『正しさ』とは何かーー韓国社会の法意識」という記事を連載しました。韓国社会のキーワードである「正しさ」や「道徳性」という言葉を手がかりに、日本とは違う韓国社会の意識を探ろうとしたのです。文春新書から刊行する新刊は、この連載を加筆したものが大きな柱の一つになっています。
出版社が作った「アマゾン」の内容紹介では「全く新しい韓国論の登場」とされていますが、私にとっては、2006年に出版した『「脱日」する韓国』(ユビキタ・スタジオ)という本や、ふだん書いている記事の延長線上にあるものです。韓国に対して厳しい内容も多くなっていますが、いわゆる嫌韓本ではありません。かといって、親韓本とは絶対に言えないでしょう。
日韓関係に限らず、取材をしていると常に「現実というのは単純じゃないんだな」という思いにとらわれます。日本人にとって理解できない「韓国の社会意識」にしても同じことで、単純なわけがありません。しかも、ある部分については「理解できない」と考えている日本人の方が、国際的には少数派だということもありえます。韓国を巡る「単純ではない現実」に関心を持っていただける方には、ご一読いただければ幸いです。