水素をどのように作るか。これは、多種多様な方法がある。しかし、ここでは説明を省略したい。その代わりとして、いくつかの方法で作った水素でFCVを走らせたときに、走行1kmあたりでどのぐらいのCO2が出ることになるか、その比較を図に示した。
ちなみに、Well to Wheelとは、ガソリンの場合であれば「油井」から汲み上げる段階から、車の「車輪」を動かすところまでの全段階を意味する言葉である。ガソリン以外でも、すべての負荷を考えていることを意味する。
最もCO2排出量が少ないケースが、太陽光発電由来の電力でEVを走らせる場合で、1kmあたりのCO2排出量は非常に少なく、1グラム程度ということになる。これに対し、最も多いケースが、ガソリン車のケースで147グラムのCO2排出である。ハイブリッド車であれば95グラムとやや少ない。
そして、肝心のFCVであるが、太陽光発電での電力を使って、水を電気分解して得た水素を使えば14グラム/kmである。すなわち、FCVの環境負荷は現在のガソリン車の1/10になる。これは、本質的な改善だと表現しても良いだろう。
しかしFCVも、都市ガスを水素ステーションにて改質した水素を使えば79グラムのCO2を排出し、天然ガスを水素ステーション以外で改質し、液化して輸送してきた場合には、111グラムのCO2を排出することになる。
なぜこのような差が生まれるのか。まず、この地球に住む限り受け入れなければならない事実がある。エネルギーの源には、(1)化石燃料、(2)原子力、(3)自然エネルギーの3種類しかないことである。
これらを「一次エネルギー」と呼ぶことになっている。一次エネルギーを大別すれば2種類あって、一つは、地球が蓄積している化石燃料と核燃料(原子力)である。これらは地下を掘ることによって、得ることができる。もう一つは太陽が毎日毎日与えてくれる自然エネルギーである。
さて、水素は一次エネルギーには入っていない。なぜなら、地球をいくら掘っても出てこないためである。ごく最近、「東芝が人工光合成の変換効率1.5%を達成」というニュースがあった。これは、太陽光を直接水素に転換する試みである。しかし、まだ実用レベルには程遠い。現状では、化石燃料から水素を作るか、自然エネルギーか原子力で発電をして、水を電気分解する方法のいずれかを使うことになる。しかし、3種の一次エネルギーは欠陥だらけなので、環境負荷やリスクなどを作りだしてしまう。