グーグルは、6月にスマホをダンボールに挟み込むだけで、VRを実現するカードボードを発表した。これは設計図をネット上からダウンロードし、ダンボールを切り貼りして組み立てるだけで作ることができる、簡易VRゴーグルだ。VRで見ることができるグーグルストリートビューなど、専用アプリも公開した。
また、11月5日には、眼球に映像を直接照射するタイプのVRデバイスを開発している米ベンチャー企業が、インテルなどから937万ドルの投資を受けたと発表が行われるなど、新しい方式も次々に登場してきている。
これまでアメリカでは、VR技術は、米軍が航空機のシミュレーション訓練用に利用を開始していたり、医療分野で手術のシミュレーション訓練用の用途で利用されてきていたが、価格が高額すぎたために、一般の産業への広がりはほとんど起きてこなかった。
OculusRiftは、ゲーム用のハードとして開発されているものだが、安価であり、ゲーム以外にも利用が容易であることから、ゲームの枠をはるかに超えて、様々な分野への応用が進むと期待を集めている。
ハリウッドでは映画への応用を試す動きが始まりつつある。先月、ホラー映画「バンシーチャプター」のOculusRift用アプリがネットで公開された。映画「スタートレック」で、若き日のスポック役を演じたザカリー・クイントがプロデュースしたものだ。OculusRiftで観ると没入感により伝わる恐怖感は強烈だ。
制作した映像会社は「映画の未来の姿」と意気込んでいる。また、VR空間で商品見本を展示するEコマースサービスや、発達障害を抱える人への行動療法の教育サービスなど、多様な異業種のベンチャー企業が立ち上がりつつある。
日本でも進むVRの産業応用
日本でも、OculusRiftの登場をきっかけに、VRの産業応用が始まろうとしている。
動きが顕著なのが、建築業界だ。竹中工務店などの大手ゼネコンの建築用のプレゼンテーションCGを専門に手がけてきた、積木製作のセールスディビジョンシニアディレクターの関根健太氏によると、「引き受けている案件で、建築物のVRを制作する機会は確実に増えてきている」という。
設計の現場では、主要なCADソフトがVR映像の出力に対応したことで、使用されることが一般化しつつあるという。これまでの建築のCGは、動画で作成することが多く、高さや広さといったスケール感を実感することができなかったが、VRであれば具体的に感じることができる。
作成したVR映像には施主に見せる目的で40階建てのタワーマンションがあるという。建設前に具体的にイメージをつかんでもらうことが容易ではない建物のエントランス部分を作成したり、部屋の中を丸ごと再現したりすることを行ったという。