メンタルコーチの役割とは
プロフェッショナルメンタルコーチ・飯嶋英樹。
メンタルコーチとして飯嶋がカバーしている範囲は広く、企業の経営者、管理職、営業マンの新人研修などのビジネス分野から、女性の自立支援、スポーツのジュニアチームや部活動、プロやトップレベルのアスリート向けと多岐に渡る。
元々はビジネス分野で発展したコーチング手法をスポーツの分野に応用しているのだそうだ。
筆者自身理解が半分だが、メンタルトレーナーとメンタルコーチは区別されて語られなければならない。その違いは、前者はメンタル面を強化するため、それぞれにある程度決まったプログラムを持っているのに対し、後者は選手それぞれの記憶から引き出した快・不快の感情を伴う体験をベースに、過去と現在を分析し、目標とする未来への道筋を選手と共に導きだす。
突き詰めるのは「選手が本当に望んでいる目標とは何か、手に入れたいと願っている成果とは何か」であり、それを顕在化することによって純度の高いモチベーションに繋げ、競技力・本番発揮力を上げていく仕事と言えそうだ。
若き日の飯嶋は、高校、大学時代にラグビーに打ち込んだ経験を持つ。しかし、あまりにも苛烈な練習に追われ、「俺は何のためにラグビーをしているのか……」とスポーツの意義どころか、主体となるはずの自分すらも見失ってしまった時期があったという。それが現在の仕事のモチベーションに繋がっている。
今回実際にコーチングする現場に取材が許されたのは、「オリンピックでメダル獲得を目指す強い日本代表選手の育成・輩出と女子ラグビーの発展」を目指して2010年に発足した女子7人制ラグビーチーム「Rugurl(ラガール)-7」のキャプテン・藤崎朱里選手である。
藤崎は高校、大学、社会人までバレーボール選手として活躍。しかし、2009年に7人制ラグビー(通称セブンズ)がオリンピックの正式種目に決定したことをキッカケに、「オリンピック出場」の夢をラグビーに懸け、2010年7人制ラグビーに転向を決めた。
類まれな身体能力を活かし、同年には7人制ラグビーの日本代表に選出され、翌2011年の「香港女子セブンズ」(香港大会)では日本代表のキャプテンを務めるほどのリーダーシップを示し、2013年まで女子7人制ラグビー日本代表の主軸として活躍している。しかし、激しいプレーゆえの故障などの影響だろうか、2014年以降、日本代表からは外れている。
そんな藤崎に再びチャンスが訪れた。2015年1月に日本代表のテスト生として声が掛かったのである。
この取材は日本代表合宿にチャレンジする直前に行われた。
今回の目的はリオ五輪のアジア予選(2015年秋)に向けて、日本代表復帰を目指すまでのプロセスをチームの目標と合致させた形で明確にすることにある。
ただ、具体的なコーチング内容までは記載できないので、どうかご了承ください。