読者の方々は、この起訴状を読んでどのように感じただろうか。誰がどう侮辱されたと考えるのか、どのようにして民族の団結が破壊され、社会に悪影響を与えたと断定できるのか、詳しい説明がまったくなく、このような曖昧な内容では、私には起訴された理由が到底理解できなかった。
ウイグル、チベット問題への提起
検察当局が問題視している浦弁護士が微博などに書き込んだ内容は、以下のようなものだ(浦弁護士の弁護人が公安当局より入手)。
「天下はすべて王の土地なのか。天下の民はすべて王の家来なのか。新疆が中国のものというのなら、植民地として扱わず、征服者や奪略者にならなくてもよいだろう。先に制した者も、後に制した者も、どちらも制しているのであり、相手を敵とみなすなんて、荒唐無稽な国策だ。ことは一朝一夕に生まれるものではない。また何か起こるかもしれない。死を恐れない民に死をもって脅しても意味がない。襲撃者は真の烈士になりたいと渇望している。先に出るも、後に出るも、一体誰を脅すというのか。新疆の政策は調整しなければならない」(2014年5月7日14時39分に「永州双規哈案律師」のアカウントから投稿)
イスラム教を信じるトルコ系のウイグル族が半数以上を占める新疆ウイグル自治区では、民族独自の文化や宗教が抑圧されていると訴えるウイグル族と漢族の間で対立が激化し、近年も多くの死傷者が出る大規模な騒乱が発生している。
私は浦弁護士に民族問題について話を聞くことがあった。彼は、ウイグル族が引き起こしたとされる事件や暴動がきっかけとなり、中国においてウイグル族に対するイメージを悪化させていることを懸念し、重要なのはその根本的な原因を考えることだと言っていた。国家が犯罪を取り締まることは当然の義務だが、浦弁護士は、自治区で漢族の移住者が増えるにしたがい、貧富の差が拡大し、就職差別などが発生していること、不当に宗教行事が阻止されたり、十分な捜査や証拠の提示が行われないまま、事件の首謀者としてウイグル族が逮捕されたりする状況を憂慮していた。
次のような書き込みもある。
「チベット自治区の寺は「九有」を徹底しなければならないという。毛沢東、江沢民、胡錦濤など指導者の肖像画をかけ、伊寧(注:地名)ではムスリムがひげをはやしたり、ベールをかぶったりすることが禁じられ、一連の政策によって打撃を与えられている。宗教意識を弱めるなどというが、漢人は頭が狂ってしまったのか。いや、漢人の頭(かしら)が狂っている?!」(2012年1月25日23時58分に「小小律師蒲志強」のアカウントから投稿)
「九有」というのは、2011年12月に実施された寺院に「共産党指導者の肖像、国旗、道路、水道、電力、ラジオとテレビ、映画上映設備、書店、新聞」の九つを設ける事業だ。寺院に共産党の政策を広め、それによって、民族の団結を増強し、社会の安定と祖国の統一に対する責任感を浸透させることが目的だという。