世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月29日

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 パキスタンとの関係は、パキスタンの役人がカシミールの分離主義者と会ったことを受け、悪化している。パキスタンをベースとするテロリストが、2008年のムンバイのようなテロ行為をすれば、インドは国際的に同情を得るだろう。

 宗教の自由については、モディの与党のヒンドゥー狂信派がイスラム教徒とキリスト教徒を改宗させる大式典を計画し、モディは窮地に立たされたが、大式典の中止を根回しするとともに、キリスト教徒の指導者に宗教の自由の尊重を再確認した。しかしモディは一層努力する必要がある。

 米政府はインドが自由貿易と安定した民主主義的秩序の推進のため、アジア太平洋地域で力と影響力を投影することを期待しているが、モディ首相就任後の1年は、インドがその期待に応え始めていることを示している、と論じています。

出典:Lisa Curtis,‘First Year: Modi Invigorates Indian Economy and Foreign Policy’(Heritage Foundation, May 29, 2015)
http://www.heritage.org/research/commentary/2015/5/modi-invigorates-indian-economy

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 論説は、モディ首相就任1年を積極的に評価しています。バランスのとれた評価と言ってよいでしょう。

 カーティスは、米政府が、インドが自由貿易と安定した民主主義的秩序の推進のため、アジア太平洋地域で力と影響力を投影することを期待している、と言っていますが、その期待は、日本としても全く同じです。

 モディが中国の挑戦に対するインドの立場を強化する戦略を推進しようとしていることは明らかですが、中印関係は一筋縄ではいきません。国境紛争があり、中国はインドの宿敵であるパキスタンとの間で深い関係を持っています。また、インドは中国が「一帯一路」などでインド洋での影響力を強化しようとしていることを警戒しています。その意味では、中国はインドにとって競争相手であり潜在敵国です。他方、インドは中国との全面対決は望んでおらず、経済面では関係を一層強化しようとするでしょう。論説でも触れられていますが、5月のモディ訪中では、中印両国は商業関係の強化に向けた動きを見せました。これには、インドが得るところは少ないのではないかとの指摘もありますが、インドが中国との経済関係を重視していることをよく表しています。米国も日本も、中国を念頭にインドに期待するに際し、このような中印関係の実態に十分留意する必要があり、「インドを中国包囲網の一角に加える」などといった、現実に即さない思考に陥らないよう、厳に戒めるべきでしょう。

  
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