2024年4月25日(木)

科学で斬るスポーツ

2015年7月7日

 先ほど述べたように、有酸素系を鍛えるのは最大酸素摂取量に、無差酸素系は最大酸素借に負荷を与えるトレーニングをしなくてはならないと考えられていた。タバタトレーニングは最大酸素摂取量、最大酸素借に同時に負荷を与えることができる。それを示したのが次の図だ。

 20秒運動、10秒休憩を1セットとする田畑トレーニングを8セット行った時の酸素摂取量と酸素借の比率を棒グラフにした。

田畑トレーニングを行った時の酸素借と酸素摂取量
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 同じ強度の運動では、必要とされるエネルギーは同じなので、グラフの高さは同じ。最初は、無酸素系が優位で、酸素借が最大の運動であることがわかる。回を重ねるごとに、有酸素系が増え、酸素摂取量が大きくなり、8回目で被験者の最大酸素摂取量に到達していることが確認された。

 田畑教授は、「この運動は、有酸素系、無酸素系両方に効いていることを意味するのです」と語る。

モーグルの伊藤選手も「TABATA」

 田畑教授によれば、田畑トレーニングによって、6週間で最大酸素摂取量は12〜13%上昇。一方、無酸素系の能力を示す最大酸素借の能力は、6週間で35%も向上した。

 このトレーニングの実践で効果を上げたのが、田畑教授の立命館大の教え子でもあり、モーグルの伊藤さつき選手だ。3月、秋田・田沢湖で開かれたW杯のデュアルモーグルで、伊藤選手は初めて準優勝した。

 モーグルは、コブ(凹凸)の富んだ斜面を滑り、スピード、ターン技術、空中演技の華麗さを競うスキー競技。瞬発的なパワーと持久力が問われる競技でもあるが、伊藤選手は田畑トレーニングをこなし、能力を開花させた。


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