科学で斬るスポーツ

2015年7月7日

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医療、宇宙医学分野でも拡大

 アスリートで拡大する一方、2000年以降、脳梗塞などで手足に障害の残った患者のリハビリ、糖尿病改善や虚血性疾患の再発予防などの観点から注目される。

 2004年から2014年9月までの10年間、この加圧トレーニングを医療に応用するために東大に寄付講座が開設された。

 ここでは、様々な臨床研究が行われ、体を動かせない、脳梗塞患者らに加圧トレーニングのリハビリを実施することで、筋力低下の予防、筋力機能の回復に役立つことなどが実証された。

 佐藤さんによれば、心臓手術を受けた後の患者の社会復帰にも効果が認められたほか、血管が若返り、糖尿病、高血圧などの改善も期待されている。

 米国でも加圧トレーニングは注目され、今年、佐藤さんらが発明した加圧トレーニング用のベルトに空気圧をかけるデバイスが、米食品医薬品局(FDA)から医療機器として認可された。ほかに米国の海軍、空軍、陸軍の基地で、兵士のリハビリ、けがの治療などに加圧トレーニングが採用された。

 今年5月、米航空宇宙局(NASA)は、火星に人を送る「火星有人探査」に向けた24の研究課題を採択したが、この中に、初めて加圧トレーニングが研究課題の一つとして含まれた。火星に行くには、2年半も狭い宇宙船の中で過ごさなくてはならない。宇宙空間では、運動をしないと、どんどん筋力が衰えていってしまう。さらに頭痛や顔がむくむなどの障害も起こる。この宇宙空間で、効率よく運動を行う手段として期待されているのが加圧トレーニングだ。

 良いことづくめであるが、佐藤さんによれば、注意して欲しいことがいくつかあるという。加圧トレーニングは、資格のあるトレーナーのもとで行うこと、適正な圧力は個々によって異なり、さらに長時間の加圧は逆効果になる。腕は10分以内、脚は15分以内が上限。初心者は5分以内がいいという。気分が悪くなったらその日にやめること。

 佐藤さんは「67歳の私は1週間に1回の加圧トレーニングで、この筋肉を維持している。毎日やる必要はない」と話す。

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