不死身の指導者
ボコ・ハラムが創設されたのは2009年。その名の通り、西洋の教育を全面的に否定し、コーランに厳格なイスラムの教えを守ることを主張。北東部ボルノ州を中心に勢力を拡大し、最盛期には戦闘員が6000人に達した。昨年夏には、過激派組織「イスラム国」をまねて同州一帯に「イスラム原理主義国家」の樹立を宣言し、今年3月に過激派組織イスラム国(IS)の傘下に入った。
殺りくを繰り返す指導者シェカウの狂気に似た残虐性も組織を特徴付けるものの1つだ。シェカウは「笑って子供も殺害する」(ベイルート情報筋)テロリストだが、幼い頃から宗教学校で10年以上もコーランの勉強を積んだ人物でもある。学校では年長者にコーランの内容について議論を吹っかけるなど好戦的で反抗的な面を早くから見せていたといわれる。
もう1つシェカウに神秘性を与えているのが不死身としての評判だ。これまで3回ほど死亡説が流れたが、毎回“蘇った”ように姿を現した。このため一部には、シェカウには何人かの替え玉がいるという情報もあるほどだ。
こうしたボコ・ハラムを壊滅することはできるのか。ナイジェリアではこの5月、それまでのキリスト教徒の大統領から北部のイスラム教徒地域出身のブハリ大統領に交代した。新大統領は腐敗に満ちた軍の改革に乗り出し、3軍のトップを更迭、軍の司令部を首都のアブジャからボルノ州の州都に移転してボコ・ハラムの掃討作戦に本腰を入れる姿勢を示した。しかし、大統領自身、軍のトップに君臨し、腐敗の渦中にいた軍人なのだ。
このため産油国ナイジェリアの石油収入をめぐるキリスト、イスラム教徒による利権争いを解消し、国家としてボコ・ハラム対策に一致して取り組むことは難しいとの見方が大勢だ。これに加えてナイジェリア軍の人権侵害を理由に米国が武器売却を禁止しているという問題もある。自爆テロの道具にされる少女たちの悲惨な状況は終わりそうにない。
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