しかも、かつては世界の経済を支えてきたのは、いわゆる「G7」(のち、ロシアが入って「G8」)諸国であったが、2008年頃からG8(G7)と並行してG20会議が開催されるようになり、世界の富の90%がG20に集中していることから、もはや世界の経済状況はG20抜きでは考えられなくなってきていた。
加えて、このBRICS、SCOの会議が米国の凋落とブレトン=ウッズ体制の終焉にとどめを刺したという分析をする評論家が少なくない。
以下では、両会議の成果を概観し、その後、その成果の意味を考えていこう。
BRICS会議
BRICS会議には、正規メンバー首脳として、中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領、ブラジルのルセフ大統領、インドのモディ首相、南アフリカのズマ大統領が出席した他、アルメニアのサルキシャン大統領、アフガニスタンのガニー大統領、ベラルーシのルカシェンコ大統領、イランのロウハーニー大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領、モンゴル国のエルベグドルジ大統領、パキスタンのシャリフ首相、タジキスタンのラフモン大統領、ウズベキスタンのカリモフ大統領、そしてユーラシア経済連合(EEU)加盟国、上海協力機構(SCO)の加盟国が招待されて出席した。
会議のまとめとして、43ページから成り、77種類の内容を網羅したウファ宣言が出された。特筆すべき内容は、まず米国が2010年の国際通貨基金(IMF)の改革計画を批准しなかったことを批判したことであろう。 IMFの機能不全を批判する一方、活動が本格化し始めたBRICSの新開発銀行(NDB)(2015年7月7日にBRICS開発銀行がモスクワで初の理事会会議を開き、インドのK・V・カマト氏が初代総裁に就任(任期5年)と、中国が主導しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)がIMF、ならびに日米が主導するアジア開発銀行(ADB)に取って代わり、世界経済を主導するという宣戦布告と考えてよいだろう。
また、多項目の協力合意を達成し、たとえば具体的な提案として、NDBが2016年初頭に第1期投資プロジェクトを確定し、既存および新規の金融機関との連携に関する提案を歓迎するとした。中国の習近平主席も、四つのパートナーシップ、すなわち、「世界平和の維持/共同発展の促進/多元的文明の発揚/グローバル経済ガバナンスの強化を実現するためのパートナーシップ」を構築し、共に素晴らしい未来を想像するべきだと主張している。
そして、特に強調されたのが、エネルギーや製造業における多くの協力成果である。たとえば、ロシアのシルアノフ財務相は、中国の投資家が今年すでに500〜600億ルーブルの債券を購入しており、中国の対露投資の拡大趨勢の継続も発表した。加えて、NDBがAIIBと提携し、IMFに見落とされてきた地域をすくい上げる救世主となることにも期待が寄せられた。加えて、このような趨勢が欧米による対露制裁を無意味化するという見解も持たれている。実際、西側の研究者の中にも、これらの動きを評価し、世界の経済の中心が西半球から東半球に移行していくという見解を持つものもいる。
そして、これら経済構想は政治構想ともリンクしており、ロシアが主導するユーラシア連合、中国が進める一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)構想を共存共栄させるために、NDBとAIIBはもちろん、BRICS基金、シルクロード基金などもすべて総動員して地域の活性化はもちろん、グローバルな政治経済の改革を進めることでも協力が合意された。
BRICS当局者たちは、BRICSを多極化した世界の新しい中心、より民主的な国際関係の新体制の象徴であると位置付けている。