SCO会議
BRICS首脳会議に続き、SCO首脳理事会が10日に開催された。SCO加盟国の全大統領、すなわち中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領、キルギスタンのアタンバエフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、ウズベキスタンのカリモフ大統領の他、アルメニアのサルキシャン大統領、アフガニスタンのガニー大統領、ベラルーシのルカシェンコ大統領、イランのロウハーニー大統領、モンゴル国のエルベグドルジ大統領、パキスタンのシャリフ首相、そしてユーラシア経済連合(EEU)加盟国が招待されて参加し、活発な議論が繰り広げられた。
SCOでもウファ宣言が出されたが、特に注目すべき内容を以下に記す。
世界が複雑化、多極化する中で、SCOの協力関係を強化し、テロリズム、過激主義、分裂主義への対策を強化し、伝統的・非伝統的な脅威と共闘して総合的な安全を構築していくことで合意した。中国が主導する「一帯一路」、ロシアが主導する「ユーラシア経済連合(EEU)」を有機的に結合し、NDB、BRICS基金、AIIB、シルクロード基金を活用しながら、ユーラシア大陸全域にインフラ建設を促進し、経済発展・貿易投資を促し、物流、情報通信といった分野のインフラを整え、工業、交通、通信、農業、イノベーション協力を促し、文化、科学技術、衛生、観光、スポーツといった分野での協力を深めることで合意した。ウクライナの平和に向けての強調についても議論がなされた。
そして、準加盟国インド、パキスタン両国の新規加盟手続きを開始することが決議された一方、同じく準加盟国イランについては、国連常任理事会が制裁を解除した際に、直ちに正式加盟となることも決められ、国連に対してはイラン核協議の早期の最終合意を呼び掛けた。さらに、ベラルーシが準加盟国となったほか、新規にアゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパールが対話パートナー国となり、SCOの拡大がさらに顕著となった。
ここで重要なのはベラルーシなど、旧ソ連諸国のSCO加盟数が増えることである。上述の通り、中国とロシアは既述のように、グローバルレベルでは利害をかなりの部分共有できるものの、SCO、BRICS内では熾烈な勢力争いを繰り広げている。そのような中でのベラルーシなどの新規加盟は、旧ソ連構成国を増やしSCOの「中国色」を弱めたいロシアにとって極めて望ましいことであり、それにより、SCOでの主導権を維持していきたいと考えているのである。
加えて、インドとパキスタンがSCOに正式に加盟することは、SCOが「平和と安定のブローカー」であることもアピールできる。インドとパキスタンは緊張関係にあった。そして、SCOへの両国の加盟は数年前から議論されていたことだったが、ロシアがインドの加盟を推進する一方、中国がパキスタンの加盟を主張し、対立する二国の加盟は難しいと考えられていたが、結局、両国同時加盟ということになり、SCOが平和構築の良き前例を残せたと考えられているのである。
そして、対ファシズム戦争および第二次世界大戦の戦勝70周年に関する共同声明も出され、戦勝に関わった人々への敬意を表明すると共に、戦後の歴史認識の歪曲・改ざんに強く反対することも強調された。なお、中国とロシアは、第二次世界大戦後のアジアの平和は中国とロシアによって構築されてきたという主張を共有してきた。