2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2015年8月20日

BRICS・SCOサミットの意義

 以上、BRICS・SCO両サミットの主な成果をまとめたが、その意義を分析していきたい。

 まず、改めて中露の関係強化と中国とロシアが主導する一帯一路とユーラシア連合の試みの共存共栄が強く謳われたことに注目すべきであろう。しかも、両計画に関わる中央アジア諸国やインド、パキスタンなどもそれに賛同していることの意義も大きい。

 また、SCOの拡大傾向が顕著であることである。正式加盟だけ考えても、インドとパキスタンとイランが正式加盟するとSCO諸国の人口は地球人口の42%、購買力平価GDPでG7の85%に達する規模になる。さらに、その拡大されたSCO加盟国に、BRICS加盟国のブラジルと南アフリカを加えるとG7よりも大きい連合体になるだけでなく、地理的分布も極めて広くなることにも注目すべきだろう。

 そして、すでに領土、人口、経済のレベルで世界の中でかなり大きい位置を占め、さらなる拡大を進めているSCO、BRICSが欧米を基軸とした世界システムに代わる国際政治・経済秩序を生み出していることをアピールした。

 加えて、インドとパキスタンがSCOに正式に加盟することは、SCOが「平和と安定のブローカー」であることをもアピールできる。インドとパキスタンは緊張関係にあった。そして、SCOへの両国の加盟は数年前から議論されていたことだったが、ロシアがインドの加盟を推進する一方、中国がパキスタンの加盟を主張し、対立する二国の加盟は難しいと考えられていたが、結局、両国同時加盟ということになり、SCOが平和構築の良き前例を残せたと考えられているのである。さらにテロ・過激主義・分離主義との戦いについてもその強い姿勢を示すことで、SCOが世界の平和を守る上で、中心的な役割を果たす意欲を表明したと言える。

 だが、日本にとっては頭の痛い問題もある。特に、第二次世界大戦に関する歴史認識問題と、70周年記念行事でのSCO諸国の協力である。これにより9月に中国で行われる戦勝70周年記念行事では、ロシアを筆頭にSCO諸国が参加することになっている。SCO・BRICSは新たな世界の経済秩序の中心主体となり、政治的な発言力も強くなってきている一方、日本にとっては、領土問題をはじめとした主要外交問題で、SCOの存在がより厄介な存在になりうるのである。

 このように、ウファで行われた両サミットからは、中露の世界における影響力の拡大、そしてBRICSとSCOが世界の新たな中心になるべくして拡大、強化されている様子がうかがえる。とはいえ、欧米のシステムに取って代わると確信しているのは、SCOとBRICSの当事者だけであり、客観的に考えれば、中露を中心とするシステムが世界を席巻すると考えるのはまだ早いかもしれない。

 ロシアはウクライナ危機に関する制裁や石油価格の暴落で2014年から厳しい経済状況を強いられており、また、中国でも元の切り下げや成長鈍化の趨勢などが見られる中で、中露が勢いをどこまで維持できるのかということは断言しづらい。とはいえ、日本の外交にも深い影響を持つであろうことは間違いない。このSCOとBRICSの動きを注意深く見つめていく必要があるだろう。

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