終章が発信術である。既存メディアに身を置く者は、これまで発信について意識することはあまりなかったが、ソーシャルメディアなどが急速に発展している中で、著者の指摘するように、ネット時代では、一人一人が「ジャーナリスト」になって発信することが普通になっている。だからこそ、どんなメディアを選ぶのかも大事で、受け取り先のことを考えて、紙なのかデジタルなのかを考えようと主張する。学校のクラスや町内会なのか受け取り手のことを考えてメディアを選ぶというのは重要な指摘である。
ゆえに本書で触れられている「メディアはメッセージ」という著者の言葉はは非常に重い。
〈あなたがデジタル以外のメディアを選べば、その選択のうちに、あなたのメッセージがこめられます。手書きの封書で書けばそれはあなたが真心をこめて書いたというメッセージです。手書きの壁新聞なら、時間をかけて、みんなに伝えたいからつくったというメッセージを発するはずです。パソコンや携帯電話だけに依存しない。いつも多様なメディアの違いに気をつけ、自分でも使い分けをしたいものです〉
外岡さんの取材したものや、書かれた多くの記事や本、人柄を知っているだけに、本書で紹介されている外岡さんの多くのメッセージは、個人的には重く心の中に響く。
そして最後に外岡さんはこう書いている。
〈この本をかきながら、私が三十数年かけてやってきたジャーリストの仕事は、だれもが日常でやっていることだと、痛感しました。職業としてはかなり「ふつうでないこと」もしてきましたが、基本動作は、だれもがやっていることなどです〉
まさに同感である。調べて、書いて、発表する。多くの人が日常の中でこの一連の動作をやっている時代に、取材しメディアに発表するのはジャーナリストだけのものではなくなっている。だれでもが発信できる時代になっているからこそ、プロのジャーナリストとして質の高い内容を発表し、「さすがプロだ」と世の中に認識してもらうような仕事をしないといけないんだよ、というメッセージを外岡さんからもらった気がした。
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