2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2015年12月3日

 「映像の世紀」といわれる20世紀は、映像技術の発明によって膨大な歴史的な資料を残した。歴史の真実に迫るのに、文書に加えて映像が加わった。

 NHKスペシャル「新・映像の世紀」は、第1回「百年の悲劇はここから始まった」(10月25日)から毎月の放映で、全6回のシリーズが始まった。新たに発掘された映像によって、歴史の流れとそれに翻弄された個人に焦点を当てる。

ヒストリーチャンネルで世界同時公開

 CS放送のヒストリーチャンネルは、世界同時公開で「ヒトラーを追跡せよ!」シリーズを11月22日から放映開始した。元連邦捜査官として犯罪者を追った経験者、ジャーナリストらが「調査報道」に取り組んだ。ヒトラーがベルリンの陥落時に自殺したのではなく、アルゼンチンに亡命した可能性である。

 「新・映像の世紀」の第2回「グレートファミリー新たな支配者(11月29日」は、アメリカの資本主義を築き上げた企業とその家族の物語である。

 ニューヨークのロックフェラービルの前で、巨大なクリスマスツリーに明かりが灯るシーンから、映像は始まる。80年前からの行事がなぜ起きたかは、作品のなかで解き明かされていく。

 ロックフェラーは、石炭から石油革命の道をいち早く見抜いた。五大湖の周辺で発見された石油を掘削して、ひとヤマあてようとする人々が群がった。ロックフェラーは、掘削には手を出さずに、原油を精製するビジネスに乗り出した。優秀な科学者を雇い入れて、どんな不純物を含む原油でも精製する技術を確立した。それが世界標準であることを示すために、社名を「スタンダード・オイル」とした。

 金融の中心地である、ウォールストリートを牛耳ったのは、モルガン商会だった。アメリカ連邦準備制度(ERS)を設立する1913年まで、その機能はモルガン商会が担っていた。ウォールストリートに看板を出さず、一般個人との取引はしないで、大企業との取引に専念した。

 そのモルガンにカメラが殺到したのは、1912年4月のタイタニック号の沈没だった。運行会社が系列の会社であり、救命具の不足と金持ちを優先した救助、そして事前に多額の保険がかけられていたことが批判された。それでも、モルガンはいっこうに強気の姿勢を変えなかった。


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