2024年7月15日(月)

WEDGE REPORT

2015年12月21日

 今回、清水建設が受注した工事をODA案件で請け負うゼネコンは日本のゼネコンかゼネコンと地場の企業が組んだJVに限定されていた。しかし、シンガポールなどではすべて政府の資金で建設が行われており、そうなると受注するためには厳しい価格競争を勝ち抜かなければならなくなる。現にシンガポールの地下鉄工事での日系ゼネコンの獲得比率は2、3割程度にとどまるという。最近は韓国に加えて中国のゼネコンも多く参加してきており、今後は日系の比率は下がる可能性が大きいという。東南アジア以外ではエジプトでも地下鉄工事が計画されているが、ここでも事業費全体の6割は政府資金で行われており、受注するには価格競争となる。

 つまり、発展途上国での日本政府が円借款を供与した案件では日本のゼネコンが工事を受注できても、そうではないシンガポールなど中進国以上の国の場合は勝ち目が小さくなる。日本のゼネコンが地下鉄工事で安定的に受注を獲得するのは次第に厳しい状況に追い込まれることも予想され、その意味でも海外事業を中期的に採算がとれる事業にしていくためには、ほかのインフラ案件、非日系プロジェクトを含めた幅広い分野での受注活動が不可欠になってくる。

 ビル案件で清水建設は完成すればインドネシアで最も高いビルとなる超高層ビルのアストラタワー(47階建て)を受注、ここにはインドネシア最大の自動車・2輪車の生産・販売を主体としたアストラ社の本社ビルなどが入る。また、ジャカルタ最大のメディア企業MNCの本社やホテルが入居するメディアタワー(39階建て)などの高層ビルを受注、地元の大手オーナー企業からも信頼を得てきている。

 高層ビル建設のライバルとなっているのは韓国のゼネコンで、現代建設、双竜建設などと競り合うことが増えているという。アストラタワーの沖和之建設所長は「独自の地下掘削技術などを駆使して工期の6カ月短縮を目指している。工期の短縮は施主に対して大きなアピールになる」と、ライバルゼネコンとの違いを強調する。

海外比率20%

 インドネシアでは清水建設は1975年から40年の歴史がある。80年代までは実績を挙げることができずに鳴かず飛ばずの時期が続いたが、同年代の後半からやっとビル案件などで受注できるようになり、90年代以降はインドネシア経済の発展やそれに伴う日系自動車メーカーの現地進出などにより工場やビル案件を獲得してきた。

 これまでは日系の建築、土木案件が多かったが、この数年は非日系が増えている。またODA(政府開発援助)中心から技術を重視した民間が伸びており、長大橋梁やトンネル、LNGタンクなど技術力が発揮できる案件を積極的に受注していきたい方針だ。同社国際支店の大石哲士ジャカルタ営業所長は「最近は毎年150億から200億円を受注、毎年150億円前後の完工高で推移している。日系と非日系の工事比率のバランスが取れてきており、今後はシンガポールに次いでジャカルタを東南アジアの営業の核にしたい」と意気込んでいる。

 同社は売上高の20%を海外事業で挙げる体制を構築する中期計画を発表しており、これに基づいて海外での受注を増やしてきている。今回、ジャカルタの現場を訪れた黒澤成吉副社長は「いまの人員を増やさずに20%を目指すように指示している」と話し、人員コストを抑えながら売り上げを増やすという難題を課している。

 日本のゼネコンは2020年の東京オリンピックまでは十分な受注を抱えており、海外までは十分に手が回らないのが現状だ。その中にあって清水建設は海外受注に積極的に動いている。これは20年以降を見据えた動きで、20年以降に国内が多少落ち込んだとしても、海外で補完できるよう布石を打とうとしている。

  
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