ヒットメーカーの舞台裏

2015年12月24日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 そして5年ほど前に「エイリアンヘッド」と名付けた装置を完成させた。頭を覆うヘルメットのようなヘッドマウントディスプレイやコンピューターなどから成る大掛かりなVRシステムである。「現実と仮想の区別がつかなくなる」というこの装置には、開発した藤井自身も衝撃を受けた。

藤井直敬 (Naotaka Fujii)
株式会社ハコスコ 代表取締役
1965年生まれ。91年に東北大医学部卒業後、97年同大大学院で博士号取得。98年から米MIT(マサチューセッツ工科大)で研究員。2004年に帰国し理化学研究所の脳科学総合研究センターで副チームリーダー。08年から同センターの適応知性研究チームのチームリーダー。14年7月にハコスコ設立。

 「この面白さをできるだけ多くの人に体験してもらいたい」と、藤井が次に起こしたアクションは、手軽な費用でVRの世界を提供することだった。着目したのは「基本的にVRに必要な技術が入っていて、広く普及してきたスマホ」だった。

 コストを抑えるために段ボールを切り貼りしながらビューワーを幾度も試作してみると、手ごたえが得られた。ハコスコの原型自体はアプリも含め数カ月でできた。医師でもある藤井は「40代のこの歳まで、お金がないと何も回らないという商売の大変さにも気付かなかった」と言い、理化学研究所のベンチャー制度を使って起業した。

 「基礎研究に身を置くだけで、なかなか社会に還元できないストレスがずっとあった」と、ハコスコを喜んでくれる顧客の反応は、これまでにない充足感をもたらしている。今年4月、藤井は自らが代表者となってクリエーターや企業、学者らによる「VRコンソーシアム」を立ち上げた。エンターテインメントだけでなく教育、医療など幅広い可能性をもちながら、なかなか定着しなかったVRを「世の中でインパクトのある産業にしたい」という藤井の決意は強い。

(敬称略)

  
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◆Wedge2015年12月号より


 

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