2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月7日

人間関係で動く中国政治

 この論評はジャーナリスト的にあれもこれも言っていますが、最後の「中国の政治はブラックボックスであり、ある分析がいかに合理的であっても、それと正反対のこともまた真実かもしれないのだ」と言っている点はその通りです。党内には常に複数の考え方があり、理論闘争は権力闘争でもあります。トップは、とりわけ機微な政治問題に関しては、この両者を巧みに操りながら政権を維持し、徐々に自分の考えを実現するように努力するしかありません。鄧小平でさえ、そうしてきました。

 今回、政治局常務委員会の全メンバーが出席し、習近平が講話をし、胡耀邦を高く評価しましたが、この時期に改革とハト派の象徴である胡耀邦を正式に復権させた意味は小さくありません。今日の中国において、胡耀邦の復権が天安門事件の見直しにつながると思っている人はいません。しかし、2009年以来の、中国の「舞い上がり症候群」と「対外強硬姿勢」は、一時的に少し後景に退くかもしれません。米国務省の中国分析の大ベテランのピルスベリーが『世界覇権100年計画』の本の中で触れた赤裸々なタカ派路線が、しばし後退する可能性があります。

 さらに習近平の父親である習仲勳は胡耀邦総書記の下で中央書記処書記を務め、胡耀邦を擁護して閑職に飛ばされた関係にあります。こういうことを大事にするのが、中国の変わらない部分でもあります。今日でも、基本は人間関係で動いているのです。また「嫌でも天安門事件を想起させる人物」の再評価は、天安門事件を契機にのし上がってきた江沢民の否定にもつながります。習近平は、鄧小平からも江沢民からも、比較的自由な立場を確保したとも言えるのです。

  
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