ロシアは、従来オリンピックの年に大統領選挙が行われていたが、前回の大統領選の前に任期が6年に延ばされた。プーチン大統領は、欧米との対決姿勢によって、80%を超える高支持率を維持している。クリミアの併合はG7からの経済制裁を招いたが、多くのロシア国民に支持され、内政への不満を外にそらすことに成功した。シリア反体制派への空爆も世論の高い支持を得ている。
他方、石油の輸出に依存するロシア経済は、原油価格の低迷と経済制裁、そしてルーブルの暴落に苦しんでいる。経済状況の急速な悪化に対する国民の不満を強硬な対外政策で覆い隠すことは難しくなるかもしれない。ロシアは今年後半に下院選挙が予定されている。不正で知られるロシアの選挙だが、前回は選挙での不正をきっかけにプーチン大統領への反対運動が高まった。次回の下院選挙をプーチン大統領はどのように乗り切るだろうか。
中国は次期常務委員ポスト争い
中国が主導したアジアインフラ投資銀行(AIIB)が今月16日に正式に発足し、習近平指導部が「一帯一路」構想の本格的推進に取り組むと考えられる。年明けに軍の大規模な改革を発表し、南シナ海で建設した人工島での飛行訓練や尖閣諸島周辺への武装巡視船の派遣など、対外的な強硬姿勢も維持している。一方、中国国内に目を向ければ、2017年の共産党大会で習近平総書記、李克強首相以外の常務委員5人が交代する。2016年は、次期常務委員のポスト争いが激しさを増すだろう。中国国内の権力闘争が激しくなれば、指導部が強硬な対外政策で国内の批判をかわそうとするため、今年は周辺国との摩擦がさらに増えるかもしれない。
北朝鮮では、5月に36年ぶりとなる朝鮮労働党大会が開かれる。これまで党大会が延期されてきたのは、経済状況の低迷が原因とされているが、この時期に党の最高指導機関である党大会を開催するのは、金正恩体制の確立を狙ったものとの見方が強い。年頭の施政方針演説では、「経済発展と人民生活の向上」が強調され、経済問題に多くが割かれた。経済を重視するのであれば、対外関係の改善を模索してくる可能性もある。他方、潜水艦発射弾道ミサイルの開発継続を示唆し、核実験の動きもみられるなど、軍事的な挑発を引き続き続ける可能性も十分にある。党大会開催までの北朝鮮の動きは特に要注意だ。
このように、2016年も日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増すだろう。今年の日本外交は、ようやく再開された日中韓首脳会談の主催国として、隣国との関係を改善できるかが重要な課題となる。加えて、G7サミットの主催国として、また国連安保理の非常任理事国として、アジアの問題だけでなく、イスラム国やシリアの難民問題など、グローバルな課題で主導力を発揮できるかが試されることになる。
しかし、安倍政権は、しばらくの間夏の参院選に全力を注ぐことになる。TPPや消費税増税に取り組むためにも、平和安全保障法制で低下した支持率を挽回する必要があり、衆参ダブル選挙になる可能性は否定できない。野党の足並みがそろわない中、民主党と維新の党の保守派が公明党に代わって連立政権を担える新党を作り、自民党と憲法改正で協力することができるかどうかがポイントの1つになるだろう。
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