2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2009年11月25日

 草加商工会議所は、中小企業庁の補助事業として年3回、経営革新塾を実施しているが、この経営革新塾、商工会議所によっては年1回のところもある。また、「規程がないという隙間をついて」全国から参加者を募集し、「紙からだけじゃ何も分からない」と、塾の開催前に参加企業に直接足を運び「会場で初対面ということはないようにしている」という山﨑氏。その声色は、知らない企業に会うのが楽しくて仕方がない感じに聞こえる。

 山﨑氏が、経営革新塾や相談に訪れる経営者に、まず取り組んでもらうことは“計画経営の実践”を勧め、事業計画書作成を促すこと。そして、その延長線上で経営革新(計画)の承認を受けてもらうこと。この経営革新計画の承認は、99年から中小企業経営者に自己分析と経営計画を考えてもらうために始められた公的な制度だが、10年経っても4万件弱の承認しかない。メリットが少なく、応募自体も少ない。山﨑氏は、07年に年間105件の承認支援実績全国1位を達成している。大したインセンティブもないのにやる気にさせる。やはり、山﨑氏自身が仕事を楽しんでいるということからにじみ出る「信用や信頼感」が、そうさせるように思える。

北の大地で支援する大学教授

 「大学での研究を社会に還元し、低迷する北海道経済を立て直すのが産学連携の目的だ」と語るのは、北海道大学教授の荒磯恒久氏。同氏は、北海道の経済活性化の起爆剤として、北大と北海道中小企業家同友会が核となり、ビジネスを生み出すことを目的とした、産学官連携研究会・HoPEの立役者でもある。

 HoPEでは毎月、同友会の参加企業や大学教授らが集まり、企業ニーズと研究シーズを発表する場を設ける取組みを地道に続けている。荒磯氏は、象牙の塔の大学の知識を中小企業のニーズと結びつけるため、ニーズを汲み取っては「この分野なら○○先生が詳しい」と橋渡しを行う。「北海道は本州と違って大企業が少なく、何もしなければ衰退しかない。だからこそ、こうした場は重要」と荒磯氏は言う。地道な取り組みが奏功し、HoPEからは、地下水を利用した路面凍結防止システムや家畜栄養学を活用した自動給餌システムなどが商品化している。

 荒磯氏がこうした考えをもつきっかけとなったのは、96年に北大の産学連携部署として新設された先端科学技術共同研究センターに所属してから。「そこで、地域産業界からの産学連携の要望を知り、同時に有効な産学連携システムはどうあるべきかを考えてきた」(同)という。転機となったのが、環境製品を製造・販売している日本システム機器(札幌市)代表取締役の関幸夫氏と開発した、自然原料だけを使った塗り壁剤の開発。強度や粘性など1年間の試験を経て商品化に成功した。関氏は言う。「大学の教授は、中小企業の経営者にとって、敷居の高い存在で話せる相手ではなかったし、ビジネスパートナーになるとも思っていなかった。しかし、荒磯先生らと塗り壁剤を共同開発・商品化することに成功し、今では売上が3000万円に達し、中国にも輸出している」

 産学連携が叫ばれるも成果に結びつかない─。これを突破する鍵として荒磯氏は「最先端知識よりも産業化に応用可能な大学の一般化知識と中小企業のニーズとを融合すること。そうすれば、連携の可能性は非常に大きい」と強調する。中小企業と大学の双方が発想を変えることで、ビジネスにつながる宝の山があるのかもしれない。

第3回に続く

○次回の更新予定
第3回 : 11月26日(木) 町工場の親父もここまでやれる

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