中国、台湾、香港、シンガポールなど、訪日外国人の過半が中華系であることを考えると、中国系民泊仲介サイトの存在感はますます高まっていくことが予想されている。
出所・日本政府観光局(JNTO)
Wedge4月号では、「Airbnbより中国民泊のほうが稼げますよ」と話すホストの声など、中国系民泊仲介サイトの活動実態や、日本における民泊事業の現状、今後の展望について取り上げている。
Wedge編集部は、日本で事業展開する中国系民泊仲介サイトの最大手「自在客」の運営企業である健云網絡情報技術有限公司の張志杰(ジャック・チャン)CEOとの接触に成功した。「Airbnbは射程圏内」と話す張CEOに今後の戦略等について尋ねた。
編集部(以下、――) 「自在客」とはどのような意味か? サービス開始時期はいつか?
健云網絡情報技術有限公司CEO
(写真・井上智幸 Noriyuki Inoue)
張 「自在客」とは、旅行者を自由自在に、という意味で、旅行を楽しんでもらいたいという意図で名付けた。
以前、私はシリコンバレーにてネットオークション事業を行っているeBayに勤め、中国事業立ち上げなどに携わった。2011年に退職して、同年の4月に健云網絡情報技術有限公司を立ち上げ、その年の12月に民泊仲介サイトの「自在客」をスタートさせた。
独立した時点では民泊仲介サイトを手掛けるつもりはなく、健康系のサービスを始めようと思っていたので、社名には健康の「健」という字が入っている。今となってはあまり関係ないが。
今では本社のある上海を中心に65人の従業員が働く会社になった。
―― 売上規模は?またどのようなビジネスモデルなのか。
張 詳細は公表していないが、15年は1億元(約17億円)程度の売上高であった。14年の倍以上を記録したが、まだ赤字だ。今年は2~3億元、来年は10億元の売上を目標にしている。
Airbnbはホストとゲストの両方から手数料を取る仕組みだが、当社はゲストからは一銭も取らず、ホストから手数料10%を取る仕組みだ。中国の旅行者はホテルの仕組みに慣れており、「ゲストが手数料を徴収される」ということに慣れていない(笑)
―― 世界何カ国で事業展開しているのか?
張 いまは日本、中国、台湾、香港、韓国、米国の計6地域で事業展開している。
世界全体では、約1万人のホストがいて、約5万室を提供している。約4000人のホストをもち、約4万2000室を提供している台湾では、Airbnbを上回る最大手だ。
今は日本を最重要市場と考えており、今年は日本での事業拡大に注力していく。日本市場は中国から近く、観光資源が豊富で成長の余地が大いにある。当社の戦略の中核国だ。