当初は6回も続いた2年間に1回の授賞式という変則的な第1回目のアカデミー賞の授賞式はルイス・B・メイヤーの招待状を手にしたアカデミーメンバー36人と100ドル払って入場したゲストの約270人が参加しての表彰式だった。
最初に挨拶したのはアカデミー賞のキー・メンバーのルイスB・メイヤー。「お陰様でやっとアカデミー賞がスタートできました。芸術性とビジネスの両面が両輪となっていい映画が生まれるものと信じています」。
第1部がパーティー形式の夕食会。第2部の最初にアカデミー賞のメンバーや組織や規則についての説明があり次にオスカー授与に移り会長のダグラス・フェアーバンクスが受賞者にオスカーを手渡している。簡単・簡素であっという間に終わってしまっていたがこれから先のハリウッド映画が世界に羽ばたけるように夢と希望がいっぱい詰まった注目すべき事業だったことには間違いなかった。
たった4人で決められた受賞者
会員の誰がどんな風に投票して決めたのかは知るとなんとも恐ろしい思いもするが、メインの4部門の作品、監督、主演の男女優に関してはたったの4人の会員の投票で決められていたのだ。主演男優賞にはドイツの大物役者、エミール・ヤニングス(ハリウッド短い滞在中、ジョセフ・スタンバーグと息が合いぜひドイツで一緒に映画を作らないかとの話が実りあのヤニングス、ディエトリッヒ主演の「嘆きの天使」が生まれている)、女優賞がジャネット・ゲイナーだったこともありアメリカ国籍を持たないドイツ人、そしてアカデミーの会員ではなかったジャネット。もろもろの条件があったにしろ第1回アカデミー賞は国境の差別もない極めてグローバルな賞として話題になっていた。
アカデミー賞の歴史をチェックしてみると果たしてシステマティックに行われていたのかと言えば、かなりのスキャンダルもある。4000枚の投票用紙がミス配達、事前に55個のオスカー像が盗まれたことが見つかった時の協会役員の驚き様は大変だった。