2024年4月24日(水)

オトナの教養 週末の一冊

2016年5月8日

ーー他にも考えていることはありますか?

吉見 人生で3回大学に行く。日本では大学に進学した場合、小中高校、大学、そして就職があります。高校と大学の間には入試という壁があり、大学から社会人の間にも就活という2つの壁があります。若い人が入試や就活のことだけを考えて若い時代を送るのは貧しいと思うのですよ。今の仕組みでは大学は通過儀礼のようになっていて、入試と就活の壁を越えれば大学在学中はどうでもいいとなってしまっている。それでは大学の意味がなくなってしまうので、2つの壁を低くし、大学へいつでも入れるようにし、学んだことがキャリアの転換点となるようにする。

 そのことを可能にするにはまず成績を厳密な基準のもとにコントロールし、単位取得を難しくすべきです。そうなると一つひとつの科目がハードになりますから、学生が取得しなければならない科目数を大幅に減らす。また科目と科目をどう組み合わせれば学生が得たい能力に結びつくかを大学側がサポートする仕組みも必要です。こうしたことが出来るようになると、学生が大学でどんなことを学び、どんな評価を得たかが可視化され、社会と大学の関係も変わってきます。

 やがて、大学はただの通過儀礼ではなくなりますから、人生でいつ大学に入っても良くなる。たとえば、1回目は18歳で、社会に出て色々と経験し30代前半で2回目の入学をする。そして3回目は60前後。定年が見えてくる頃に、何か事を成したい人に大学で再び必死に学んでもう一花咲かせるチャンスを与える。日本では欧米の大学に比べ社会人学生の数が圧倒的に少ないし、そうやって3回大学に入るのが一般化すれば、800校は救えないかもしれませんが、多くの大学の経営的な支えになります。なにより、社会が大学での学びを評価するようになると思いますね。
 

  
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