「心・技・体」。「体」は肝心な時に軟弱になる。「日本人はメンタルが弱い……」。そんな言葉を耳にすることがあります。
島国だから。根性が足りないから。人それぞれにさまざまな見解があるでしょう。みなさんはどう考えますか? 私は、「日本人はメンタルが弱い」のではなく、「メンタルの強化を行っていない」と考えています。前回もお伝えした通り、メンタルはトレーニングで強化することができるからです。
質問です。「心・技・体」という言葉がありますが、この3つのうち、試合、試験、本番直前に、一番大切なものはどれだと思いますか?
この質問に対し、私の講演会に来てくださった方の9割以上の人は「心」と答えます。「体=体力面・フィジカル」や、「技=技術・テクニック」は、本番直前になって急激な低下や向上はありません。しかし、「心=メンタル」に関しては、本番直前に大きく揺れ動くことがあります。ほとんどの人は、肝心な時に心が揺れ動くことを経験的に知っています。だからこそ、「心」の重要性を理解しているのです。
では、次の質問です。今までの経験で、「心・技・体」のうち、本番直前の準備のためにかけた時間・量が最も少なかったものはどれだったでしょう。
これも、みなさん「心」だと答えます。
メンタルの重要性は理解しているものの、メンタルを強くする準備はしたことがない。そもそも、どうすればいいのかわからない……。
ここに、今までうまくいかなかった原因があるのです。多くの人がこれまで感じていた「何かが足りない……」「なぜいつも上手くいかないのか……」といった思いは、メンタルトレーニングそのものをしていなかった、あるいはそのトレーニング方法が正しくなかったからだといえます。
教育から軍事まで網羅するメンタルトレーニング
少し話がそれますが、世界ではメンタルトレーニングは大きな広がりを見せています。トレーニングが当たり前の時代となっているのです。テニスの錦織圭選手は、アメリカのIMGアカデミーのアンガス・マグフォード氏の指導の下、高度なメンタルトレーニングを受け、自身も相当の知識を持っています。スペインのプロサッカーチーム、FCバルセロナ監督ルイス・エンリケ氏も、個人の専属メンタルトレーニングコーチをつけています。さらに、ドイツ、オランダ、スウェーデンのサッカー代表選手もメンタルトレーニングを行っていす。
スポーツのみならず、教育用、医療用、軍事用、ステージパフォーマンスの世界でも、メンタルトレーニングは応用され、素晴らしい成果を上げています。世界的なサーカス、シルク・ドゥ・ソレイユにも、ジョン・フランソワという専門家がおり、パフォーマーたちにメンタル面の指導やサポートを行っているという話を聞いています。
アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダ…メンタルトレーニングは世界各国で独自に発展しているのです。