第3章に示されているように、空間を明確に境界付け、その空間内の人やモノを権力が排他的に管理するという概念のルーツは、ヨーロッパで主権国家体制が確立された1648年のウエストファリア条約に求められるという。その後のアメリカ大陸の開拓、アジア・アフリカへの植民地展開、脱植民地主義、そして冷戦後世界の国境レジームなど、歴史的な展開を押さえると、ボーダースタディーズが立体感をもって立ち現れる。それはいまや海や空、宇宙にまであてはまるという。空間のとらえ方は著者が指摘するように次元を超える。学問的な可能性は、従来の地域研究にとどまらず、多次元かつ広範囲に及び、分析にはマルチタスクが必要となる。新たな研究の地平を切り開くダイナミズムを感じさせてくれる力作である。
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