2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2010年1月22日

 京都議定書では、2012年までしか温室効果ガスの削減目標が設定されておらず、しかも削減義務は先進国のみで、途上国には課されていない。COP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)の最大の課題は、13年以降の枠組みを決めることだった。特に、京都議定書から脱退し、二度と戻らないと明言している米国と、逆に京都議定書の延長を主張する途上国、とりわけ中国やインドなどの成長著しい主要途上国が、削減義務を負う枠組みを構築できるかどうかが焦点だった。

 交渉は異例の展開をたどった。最後の2日間に予定されていた首脳級折衝が行われるまでに、閣僚級(環境大臣)折衝が行われて論点が絞られていくのが通常の交渉プロセスだ。しかし、今回は閣僚級折衝の前に行われた事務レベル折衝が不調で、交渉テキストは未調整論点だらけとなっていた。打開策として裏で準備されていたデンマークの議長国提案が、早期段階で新聞にリークされたこともあって、交渉現場は大混乱し、議長国の調整もままならない状況に陥った。そこに首脳級折衝が始まったため、合意がまとまるか全く五里霧中の状態となってしまった。

 そこから前例なき国際交渉が始まる。議長国の差配に業を煮やしたサルコジ仏大統領などが声を掛けて、25カ国と1機関の首脳が非公式に集まり、断続的に10時間かけた折衝が行われた。会議では首脳自身が実質的に筆を取って、一言一句合意案を詰めていったと言われている。このような会議はこれまでの外交の歴史でも、まれな事例ではないだろうか。ともかく、こうした難産の末、コペンハーゲン合意が誕生した。しかし、これはまだ25カ国レベルでの合意であり、条約締約国全189カ国がコンセンサス方式で決定を行う全体会合の手続きを経る必要がある。

 ところが、この全体会合でスーダンと中南米諸国が反発、合意文に賛成の国と反対の国が応酬し、またも議長のデンマーク首相の不手際で採択に至るチャンスを失ってしまう。その結果、「締約国は、コペンハーゲン合意に留意する(take note)」という中途半端な「決定」となってしまったのである。

日本にとっての
合意の意味

 COP15が始まる前、日本が最も警戒していたのは、次のような結果だった。それは、米国と中国等の新興国が、京都議定書とは異なる「緩い」枠組みで合意する一方で、日本は、EUや豪州に説得されて、25%削減という突出した目標を、「厳しい」京都議定書の第2約束期間(13年以降)の目標値として書き込まされるというものである。

 米国は、数値目標を守れなかった場合に、クレジット(排出権)を購入する義務が強制的に課せられる、京都議定書のような仕組みには、絶対拒否の姿勢を貫いている。しかし、自国が組み込まれないなら、京都議定書がどうなろうと関心はない。中国やその他の新興国は、削減義務が課されていない京都議定書が続くことを歓迎する。


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