このスキームは、先進国と途上国間であれば、どのような地域においても当該地域や参加国の特性に応じて具体的な設計が可能である。さらに分野も、輸送、業務、家庭、シンク(森林のCO2吸収源)などにも広げることが可能である。例えば、ハイブリッド自動車を日本から輸出して、対象途上国のガソリン車を代替した場合や、日本でより軽量な鋼板を開発して輸出し、対象途上国で燃費のいい国産車を開発した場合にも適用できるといった柔軟性を持たせることも可能である。
こうした新規スキームは、排出削減を生産段階でしか評価しない現在の京都議定書のルールに対して、消費段階での排出削減を促すという意味で、新たなテーゼを提起できる。省エネ法の経験を持つ日本はMRVに多くの知見を有しているほか、既に多くの実績を挙げてきた日・米・豪・加・韓・中・印の7カ国による温暖化対策地域協力のアジア太平洋パートナーシップ(APP)の実績を有効に活用する制度的インフラを提供することになる。
京都議定書の枠組みで認められているオフセット・クレジットは、国連が認証するCDM(クリーン開発メカニズム)などだが、CDMが中国に偏在しているために、数多くの途上国には資金が流入していない。先述の新規スキームは、大半の途上国にとっても魅力的なプランとなる。
国連プロセスを代替するのではなく、補完するという位置づけを明確にしながら、CDMで潤う中国以外の新興国に対してこうした仕組みを提示するとともに、島しょ国や最貧国には適応のための資金を提供していく。さらに、適応に資する資金や技術の提供を行う日本企業に対しても、国内規制の遵守に使える「温暖化防止貢献ポイント」などを付与していくような政策も加えて打ち出していけば、日本独自の先進国−途上国モデルの構想を示すことができる。来るダボス会議などでこうした構想を主唱することによって、コペンハーゲンで沈滞した温暖化交渉を再び活性化し、日本の存在感を高めることにもつながるだろう。
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