2024年7月15日(月)

韓国の「読み方」

2016年8月1日

 映画には「いい日本兵」も何人か出てきた。慰安婦の部屋に入ってきて「何もしなくていいから」と休ませる日本兵や、部隊周辺の地図を密かに慰安婦に渡して脱走を手助けしようとする日本兵だ。慰安婦の一人が、恋仲になった日本兵を指して「あの人はいい人。戦争が終わったら結婚しようと言ってくれてる」と話すシーンもあった。後述する処刑シーンでは、慰安婦を射殺するよう命じられながら、どうしても引き金を引けない日本兵も出てくる。

 脱走や処刑という行為そのものに現実味が薄いのでそちらはコメントしようがないものの、自分の持ち時間に慰安婦を休ませたり、慰安婦と結婚しようと言ったりする日本兵というのは、元慰安婦の証言にも出てくる。韓国では通常、そういった日本兵の存在は無視されているので、こうした日本兵を登場させているのは「日本への配慮」か、「きちんと事実と向き合おうとする姿勢」なのだろう。おそらく趙監督としては、ここまで配慮しているのに「反日映画」などと言われたら不本意だと考えるのではなかろうか。その感覚は、私が昨年の著書『韓国「反日」の真相』で指摘した「自覚なき反日」に通じるものだと感じられた。

「配慮」も処刑シーンで台無しに

 ただし、そうした「配慮」も、現実味に欠ける残虐な処刑シーンによって台無しである。病気などで客を取れなくなった慰安婦は用済みだと処刑され、終戦時には証拠隠滅のために慰安婦全員が処刑対象とされる。さらに、死体にはガソリンのようなものをかけて焼いてしまうのである。銃殺を命じられたのに引き金を引けなかった日本兵が薄笑いを浮かべた上官にその場で射殺され、慰安婦の死体と一緒に燃やされるというシーンまである。

 趙監督は、元慰安婦が心理療法の過程で描いた「燃やされる少女たち」という絵に衝撃を受けてシナリオを書いたという。だから処刑して燃やすシーンになったようだが、これは、さすがにやりすぎだ。

 この絵を描いた元慰安婦には、私もインタビューしたことがある。慰安婦にひどい扱いをする日本兵がいて、後頭部を激しく蹴り付けられて何日も意識を失うほどの大怪我をしたことがあると訴え、今でも傷が残っていると見せてくれた。当時の日本軍が中国で何をしたか考えれば、そうした乱暴な行為をする日本兵がいたであろうことは想像に難くない。日本人の一人として、非常に申し訳ない気持ちになった。

 ただ、この女性は気が付いたら病院にいて、1カ月入院したと話していた。映画に描かれていた部隊なら銃殺されたところだが、大事な商品である慰安婦を簡単には殺せなかったということだろう。特別に人道的な扱いというわけではない。私が読んだことのある資料は限られているが、慰安婦に対する暴力自体は珍しくなかったものの、病気の慰安婦を殺すというよりは、1カ月入院させて治療する方が普通の感覚のように思えるのである。


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