2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年8月4日

投票率を上げたければ
投票にかかるコストの削減が必要

 今回の投票率は前回選挙よりポイント上昇したとおおむね好意的に報道されているが、これまで見た通り、実際には、今回の投票率の実績値と潜在的投票率との比較によっても、前回の潜在的投票率と今回の実績値との比較によっても、高々2%ポイント程度の上昇に過ぎず、一般的な理解とは異なり、実は投票率は趨勢的な変化に沿って変動していたに過ぎないことが分かった。

 政治経済学的には、投票率が高ければ高いほど喜ばしいことかといえば、必ずしもそうとは言えない。例えば、投票率が高くても過大なコストを社会や個人に課しているとすれば大きな問題であるし、投票率が低くても直接投票の場合と同じ結果が得られる場合には問題ないことが知られている。そうとは言うものの、もし、政策判断的に、あるいは社会的に、投票率は高いほど良いという共通認識がある場合どのような施策を講じればよいのだろうか。先に見た投票率に影響を与える要因のうち、立候補者の違いや提示される政策の違いについては政治側の課題であり、政党や政治家の努力に期待するほかないし、有権者側での一票の価値の感じ方についてもその時々の選挙における接戦度に依存してしまうため、投票率を確実に上げる施策にはつなげにくいきらいがある。

 しかし、投票にかかるコストに関しては別であり、こちらは施策により低下させることは十分可能である。特に、日本の場合、天候要因によって投票率が左右されることが、これまでの経験上、国政選挙においても都知事選挙においても多い。天候要因に関しては、実際に投票所へ足を運ばなくとも投票できる仕組みを構築すれば解決可能であり、その有力候補がネット投票システムであろう。しかし、システム構築にかかるコストなど課題も多く実現されるのはもう少し先になるかもしれない。

 そこでここでは在外の日本国民(ただし、在外選挙人証保有者のみ)には認められている郵便や宅配便による投票を日本国内の有権者に認めることを提案したい。郵便等による投票を認めれば、わざわざ多額のコストを用いてまで期日前投票所を設置する必要もなくなるし、天候不順であったとしても投票所へ足を運ぶ必要もないことから、投票にかかる心理的なコストを下げることが可能となり、投票率を高める方向に働くだろう。もっとも、郵送による投票を認めることで、選挙結果の確定まで相応の日数がかかることや、投票の自由・秘密が侵害される可能性も指摘できる。

 まず前者の懸念に対しては、そもそも多額のコスト(人件費)をかけてまで投票日当日中に選挙結果を確定させる必要性はあるのだろうか。後者については、投票の秘密・自由が侵害されるケースは犯罪行為であるし、現在の日本においてそうした犯罪行為が大規模に行われる可能性は極めて低く都知事選のように大規模な有権者を抱える選挙にあっては選挙結果に対して微々たる影響しか与えられないだろう。有権者の投票コストを下げるため、また今後の一層の高齢化・過疎化の進展を睨んでも、郵便等による投票の受け付けは一考に値すると思う。

  
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