11日と12日、タイを代表する観光地であるホアヒンやプーケットなど全8県で連続爆発事件が起こった。死者4名、負傷者34名を出すショッキングな事件。タイ中が大きな衝撃に包まれた。
王族への冒とく タイ人の犯罪ではない?
大きな衝撃という理由の背景には、事件そのものが王族への冒とくにあたるからだ。事情を知らない人もいるかもしれないが、タイでの王族の地位は計り知れない。プミポン国王への忠誠心は、この国の根幹であり、自ずと王妃、皇太子、皇女に対しても絶対的な敬意が払われる。事件が起きた11日は、母の日、つまりシリキット王妃の84回目の誕生日の前日であり、翌日は和やかな雰囲気がタイ全土を包むこととなっていた。しかもよりによって、爆発事件が起きた場所は、王室の保養地であるホアヒン。王妃を祝う前日に、同地で爆発事件を起こすなどありえない、というのがタイ人の率直な感想でもあり、こちらに住んでいる日本人ですら、その衝撃に耳を疑ったほどだ。
こうなると容疑者は「タイ人による犯罪ではないだろう」と一般的には思うものだが、事件を混乱させるためにも狙い通りであったとも言い換えられる。
広範囲でほぼ一斉に起きた爆弾テロ。当然、単独犯は考えられず、複数人の犯罪組織によるものであることは明らかだった。容疑をかけられたのは、3つの組織。まずはイスラム国(IS)などの国際犯罪テロ組織。記憶にも新しいバングラデシュでのテロ事件やインドネシアでの連続爆発事件など、ASEAN周辺でも破壊工作が行われているのは、世界的にも知られており、タイでは2015年8月にバンコクの中心地、エラワン廟での爆発事件が起きた。
ただし、このときは新疆ウイグル自治区出身者による犯行という形で決着し、組織ぐるみではなかったが、彼らの破壊活動がASEANのハブでもあるタイにまで広がり狙うことは想像に難しくない。